日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-E06 医療ケアのある児への家族再統合に向けた入所施設としての8年間の取り組み
橋本 孝子坂田 睦子鈴木 郁子丸木 和子
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 42 巻 2 号 p. 231

詳細
抄録

はじめに 当施設はネグレクト等の被虐待児童を受け入れ、入所機能を用いながら家族再統合に向け取り組んでいる。今回、虐待により措置入所後8年間かけて自宅外泊が可能となった事例を報告する。 事例紹介 N君 19歳 CHARGE症候群(気管カニューレ留置・経管栄養・強いこだわり)、家族構成 両親・長姉・兄・本人(次姉は同疾患でN君の生まれる3年前に死亡)N君は7歳までS病院に入院。特別支援学校就学を機に自宅療養となる。肺炎で入院した際、ネグレクトおよび身体的虐待を疑われ児童相談所に通告。S病院に1年間一時保護後、11歳で当施設に措置入所となる。 取り組み 入所前から児相・S病院・当施設のケース会および家族の面談を行い、「再び家族と生活できる」を目標に各機関の役割を明確にした。家族には月1回の面会と棟内宿泊を最低限の約束とし、2〜3カ月に1回対応状況と情報共有、家族評価を目的にケース会を行った。 結果 当初、両親はほぼ毎月面会と棟内宿泊を行うも義務的であり、N君に対する受容的態度は見られなかった。震災や各機関の担当者変更等により約束が実行されず、面会・棟内宿泊共に激減した。しかし、他病院へ受診同行等母親を意図的に介入させることで意識付けし、5年目に自宅外出、さらに社会参加を視野に入れ8年目に2泊3日の自宅外泊が可能となった。 考察 N君の場合両親の障害受容の困難さや医療ケアが必要でかつ多動のため、療育困難となり入所せざるを得なかった。しかし、8年の間に本人の成長と体調が安定したこと、父の再就職、姉兄の自立により家族状況が変わったことで外泊可能になったと考えられる。本事例にかぎらず、時間の経過の中で入所時の状況とは家族機能が変わる。目標を確認しながら、関係機関と家族や社会資源の評価をし、継続して支援していくことが児童支援では有用であることがわかった。今後も関係機関と連携しあきらめない支援をしていきたい。

著者関連情報
© 2017 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top