日本重症心身障害学会誌
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P-1-F16 当科管理中の経小腸栄養症例の栄養と管理上の問題点の検討
山本 晃子真野 ちひろ益山 龍雄岩崎 裕治加我 牧子
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2017 年 42 巻 2 号 p. 249

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抄録
はじめに 経口摂取が困難な重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))では長期臥床、脊椎変形の進行、消化管運動障害などの種々の要因から消化器症状を呈することが多い。また呼吸障害・けいれん発作などは胸腔・腹腔内圧を上昇させ胃食道逆流を発生させる。顕著な胃食道逆流症や幽門機能不全、消化管通過障害などを認め、姿勢や栄養剤の工夫にても胃内(幽門前)への栄養剤投与が困難な場合には経小腸的(幽門後)な投与を選択せざるを得ない場合がある。経小腸的栄養投与を行う自験例の現状を調査し、管理上の問題点を検討した。 対象と方法 当科で経小腸的栄養管理を行った2歳から35歳の男性4名・女性5名、大島分類1の重症児(者)9例を対象とし後方視的に検討した。 結果 経小腸的栄養管理となる原因は胃排泄遅延、胃食道逆流症、誤嚥、変形による通過障害が主であった。いずれの症例も呼吸障害を有し、気管切開もしくは呼吸器装着を要していた。消化態栄養剤の使用は9例中5例に認められた。アルブミンやBMIが低い症例が多いものの、亜鉛や銅の欠乏を認めた症例はほとんどいなかった。難治な下痢は9例中2例に認められ、いずれも消化態栄養剤を使用していた。全例に13時間から21時間に及ぶ長時間の注入時間を必要としていた。カテーテルの交換頻度は栄養剤の種類やカテーテルの種類・太さ・材質にかかわらずさまざまであり、1カ月から3カ月で交換されていた。 考察 幽門後への栄養剤投与は、胃内栄養が限界となった重症児(者)への対応としてよく用いられる。輸液療法の頻度が減少するなどの効果の一方で、長時間に及ぶ注入時間やそれに伴う活動制限、下痢、栄養状態、カテーテルの閉塞などの課題が残されており多職種での対応を必要としている。近年、経小腸的栄養管理における半固形剤の使用などの報告も散見され今後さらなる検討が必要であると考える。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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