日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-F15 重症の弛緩性便秘例への漢方治療と腰方形筋マッサージおよび放屁モニタリングの試み
宮副 治子谷口 美和中富 明子島内 彩國場 英雄
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 42 巻 2 号 p. 249

詳細
抄録
はじめに 重症心身障害者は、大腸の蠕動運動が低下していることも多く、弛緩性便秘を示すことがある。今回われわれは、イレウスを繰り返す重症の弛緩性便秘例に対し、漢方治療と、自律神経を介して消化管機能にはたらきかけることを意図した腰方形筋マッサージを併用した。また、消化管機能評価法として、(株)タイヨウ製放屁カウンターmBA−31_FarT型による、放屁回数のモニタリングを採用した。重症心身障害者の消化管機能へのサポートについて考察し報告する。 症例 49歳男性 [診断]新生児仮死による脳性麻痺、てんかん、精神運動発達遅滞 [経過]10歳入所時より便秘あり。32歳時、宿便性イレウス、感染性腸炎、敗血症発症以降、徐々にADL低下。多種の緩下剤投与、排気ブジー、浣腸で排便コントロールを行うも、45歳時よりイレウスを繰り返し、長期間の絶食、中心静脈栄養を含めた輸液管理が必要とされる状態が続いていた。48歳時よりこれらに漢方治療と腰方形筋マッサージを併用し、イレウス予兆時には栄養のスキップを行うよう方針を変更した。その結果、一年後の腹部単純写真で大腸ガス像の改善がみられ、イレウスの頻度が減少、絶食期間が短縮された。放屁回数のモニタリングにより、放屁は1回/日と少ないことが判明した。 考察 重症弛緩性便秘の大腸ガス像が、漢方治療と腰方形筋マッサージの併用で改善し、イレウスを予防できた症例と考えた。標準的治療に苦慮する症例に、新しい治療の選択肢となる可能性がある。自律神経の調節機構を含む消化管機能の全容は未だ明らかでなく、重症心身障害での消化管運動調節機構は未開の分野であり研究の積み重ねが必要である。本症例では、放屁回数は1回/日と少ないにもかかわらず大腸ガス像の改善が見られたことから、介入が排気ブジーの効果を高めたと推測した。放屁回数モニタリングは、消化管機能把握に有効で、治療法選択の一助となる可能性がある。
著者関連情報
© 2017 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top