日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-G17 視線入力装置を用いたRett症候群の認知機能評価の試み
−追視と物の永続性課題による1事例検討−
米田 歩平野 大輔谷口 敬道下泉 秀夫
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2017 年 42 巻 2 号 p. 262

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抄録

目的 重症心身障害児(者)は、四肢に重度の障害があり既存の認知機能評価では発達段階を評価することは困難であり、客観的な評価方法が確立されていない。そこで、視線入力装置を使用することによる追視と物の永続性課題の評価方法の可能性を検討した。 方法 対象者は20歳代前半の女性、横地の分類ではA1、遠城寺式・乳幼児分析的発達検査法では2〜6カ月の発達段階である。本研究では視線入力装置(Tobii Pro X-2-30)を用いて、視線を測定し、Tobii studioソフトにて解析を行った。測定課題は「乳幼児の精神発達と評価」(I・C・ウズギリス/ハント)の認知発達課題を参考にして、カップで犬が隠れる課題を作成し、パソコン画面上に提示した。なお、5分間の課題を10日間、同じ課題を提示して視線の動きを計測した。スライド画面の注視時間から注視率を解析し、さらにカップを見ていた時間から課題注視率も解析した。課題注視率より、対象者の追視と物の永続性について乳幼児の発達課題通過率と比較し発達段階を検討した。 結果 注視率は初回時46%、最終時59%とスライドを見る時間が増加した。犬が1/2隠された場面の課題注視率は初回および最終時ともに100%となった。また、完全にカップに隠された場面でも課題注視率は100%となった。このことから、対象者の追視と物の永続性課題は8〜12カ月前後の発達段階であることが示唆された。 考察 対象児のように既存の評価バッテリーでは、発達段階の評価が難しい方であっても視線を用いることでより詳細な評価の可能性が示唆された。客観的な指標として発達段階が示されたことで、対象者の発達段階に合わせた玩具の選択や関わり方の一助となると考える。

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© 2017 日本重症心身障害学会
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