日本重症心身障害学会誌
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P-1-G20 長期に理学療法介入し、成長・発達がみられた在宅人工呼吸器装着児の一例
岩島 千鶴子井合 瑞江辻 恵
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2017 年 42 巻 2 号 p. 264

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抄録

はじめに 乳児期に在宅人工呼吸療法を導入退院後、長期に理学療法介入し、緩やかな成長・発達がみられた症例を経験したので報告する。 症例 13歳、女児。メビウス症候群。大島分類3、準超重症児。10カ月時、呼吸障害で入院した際に人工呼吸管理を要し、11カ月時に気管切開術施行。1年3カ月の長期入院を経て、2歳1カ月時に在宅人工呼吸療法導入して退院。5歳5カ月、胃瘻造設術施行。 理学療法経過 開始時(10カ月)、低緊張、仮面様顔貌あり。運動麻痺はなし。唾液嚥下は可。未定頸。自閉傾向が強く、感覚過敏あり。在宅人工呼吸療法導入の退院時に、呼吸器搭載可能な車椅子を作製。その後は発達状況に合わせ、臥位から座位ベースとなるように段階的に車椅子を修理・新規作製した。当初は感染に伴う呼吸状態悪化の際、回復に時間を要し介入頻度の確保が難しかった上、感覚過敏のため、手掌・足底の触刺激に泣いて呼吸を荒げるなどハンドリングに対する拒否が強かった。骨盤帯付長下肢装具を作製し、足底接地した立位の中で頭部・体幹の保持をはかった上で、段階的に装具なしで立位練習を取り入れ、介助下で立ち上がりや歩行器歩行練習を行うに至っている。現在も入眠時や体調不良時に人工呼吸器依存となる状況は変わらないが、就学後は体調も安定し、座位姿勢の受け入れや慣れた人や場面ではあれば、肩や歩行器につかまるようになってきている。 考察 メビウス症候群は先天性両側顔面神経麻痺に外転神経麻痺の合併を基本に、脳神経麻痺・顔面奇形・精神遅滞・自閉・てんかんなどがみられる病態である。橋・延髄の石灰化、橋・延髄低形成を示すことによる呼吸障害が生じることがある。本症例は、人工呼吸管理のため地域療育センターへの移行ができず、当センターで就学を迎えたが、逆に場面を大きく変えず、繰り返して学習することで、緩やかに成長・発達が確認でき、長期的に関わる重要性を感じられた。

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