日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-2-E15 重症心身障害者の神経因性膀胱に対する尿道ステント留置に関する考察
高橋 佳代子明城 和子杉森 光子大瀧 潮上石 晶子有本 潔木実谷 哲史
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2017 年 42 巻 2 号 p. 275

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抄録

はじめに 重症心身障害者は神経因性膀胱による排尿障害から一日数回の導尿を余儀なくされている例が少なくない。私たちは、神経因性膀胱のため一日3回の導尿を行っている男性に対し、尿道ステント留置を行った例を経験したので報告する。 症例および経過 脳性麻痺、知的障害、てんかんで大島分類4の52歳男性。神経因性膀胱のため42歳時より導尿を開始し、5年前からは一日3回の導尿を行っていた。尿量は多いと一回1000mlを超えるときもあった。また徐々に導尿時のカテーテルが挿入困難となり、総合病院の泌尿器科を受診し、緊張から尿道狭窄を来しカテーテル挿入困難となっているとして、挿入困難時はキシロカインゼリーを尿道内に注入し、しばらくたってからカテーテルを挿入するよう指導された。また、一カ月に一回の頻度で尿路感染を起こし、抗菌薬での治療を行っていたが、昨年は尿路感染から敗血症となり、治療に約1カ月を要した。培養の結果から選択した抗菌薬(CTRX)投与でアナフラキシーを起こし、もともとST合剤にもアレルギーがあるため、感染時の抗菌薬の選択にも困難をきわめた。感染予防に関して良い方法はないか再度泌尿器科を受診した際に、尿道ステント留置をすすめられ施行した。その後導尿の必要はなくなり、術後認めた血尿も一週間ほどでなくなり、尿路感染の頻度は6カ月に一回と減少した。 考察 重症心身障害者の神経因性膀胱では多くが一日数回の導尿を行っている。導尿回数が多くなるにつれ尿路感染の頻度も増し、導尿の時間を考えて外出や外泊が制限されるなどQOLの低下につながっている。尿道ステント留置は神経因性膀胱のある障害者に対してQOLを上げる有効な手段の一つと考える。一方で同じく尿道ステント留置を行ったがステントが膀胱内に落ち込み、その後膀胱皮膚婁を造設した例も経験しており、狭窄部位や程度など適応をよく見きわめる必要もあると思われた。

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© 2017 日本重症心身障害学会
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