抄録
はじめに 経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下、PEG)は簡便で低侵襲である方法であるが、最終的には盲目的な穿刺操作が含まれているため安全な方法とは言い難い。当院では1998年1月から2016年12月までの間に52例の重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))にPEGが試みられ、うち3例が穿刺の安全性が担保できず開腹胃瘻造設術(以下、開腹胃瘻)へ移行したので報告する。 症例1 31歳男性。核黄疸後遺症、重度アテトーゼ、知的障害、てんかん。長期にわたり経鼻経管栄養が施行されていた。アテトーゼのため経鼻胃管の自己抜去が多かった。腹部単純X線検査(以下、腹部XP)にて胃前面に腸管の存在が疑われた。 症例2 31歳女性。染色体異常症、四肢麻痺、知的障害、重度側彎。開腹術の既往あり。呑気症、鼓腸がみられ、経口摂取が困難な状態であった。上部消化管造影検査(以下、UGI)にて胃前面に腸管の存在が疑われたため、術前に経鼻胃管による消化管減圧が行われた。 症例3 26歳女性。四肢麻痺、知的障害、てんかん、重度側彎。水分・栄養補助のため、経口ネラトンカテーテルが用いられてきたが、カテーテル挿入が困難となってきていた。UGIにて胃が肋骨弓下縁より尾側に存在しなかった。3例とも気管内挿管による全身麻酔下に内視鏡を胃内に挿入したが、腹壁より安全に胃を穿刺することができないと判断し、開腹胃瘻(Stamm法)へ移行し、完遂した。 考察 3例とも術前の腹部XP、UGI等よりPEG施行困難と予測された症例であった。重症児(者)ではPEGでも全身麻酔下で行われることが多い。PEG施行困難と予測される場合、麻酔・手術の反復を避けるためにも術前に開腹胃瘻という方法があることを提示する必要があると考えられる。