日本重症心身障害学会誌
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P-2-G04 動く重症心身障害者の行動障害の要因
市橋 祐樹
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2017 年 42 巻 2 号 p. 297

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抄録
はじめに 動く重症心身障害者は自らの意思を伝えることができず、看護援助の際に見られる行動障害がある。その背景には、他者や自己に対する強い攻撃心・怒り・不満などの感情が生じていると考えられる。 目的 行動障害を引き起こしている生物学的要因、発達的要因、心理・社会的要因を明らかにする。 対象 50歳男性、慢性腎不全、脳性麻痺、重度知的障害、精神遅滞 倫理的配慮 家族へ研究目的、結果については研究以外に使用しないこと、不利益が生じないことを説明し同意を得た。 方法 1)生物学的情報・行動障害の頻度 2)超重症児判定 3)遠城寺式・乳幼児分析的発達検査 4)強度行動障害判定 5)生活リズムを調査。1)〜5)の要因と療育環境が行動障害(暴力)を起こしている相互関連を考察する。 結果・考察 超重症児判定では13点であり、準超重症であった。遠城寺式・乳幼児分析的発達検査では、言語では1歳2カ月程度、社会性は11カ月、運動においては1歳前後であった。精神の発達不全から認知、言語、運動、社会的能力の障害によるコミュニケーション能力の発達が未熟である。強度行動障害判定では20点であり、行動障害は強度であった。透析前に行動障害が頻回に見られていた。慢性腎不全・透析による体調のくずれや透析中の身体拘束による身体的・心理的苦痛があると考えられた。これらの問題が相互に関連しあい不快症状を強め、不安、恐怖、欲求不満、他者に対する敵意、怒りなどの感情を上手く表現できず行動障害という形で行動化していると考えられた。行動障害に対しては、患者の特性を見きわめ、問題改善していくことが必要であり、観察の積み重ねから患者の行動の意味を考え行動障害の減少に向けた解決策を考えていくことが不可欠であった。 結論 さまざまな要因が関連しあい不快症状を生じ、自ら症状や感情を適切に他者に伝えることができないため、行動障害につながっていた。
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© 2017 日本重症心身障害学会
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