抄録
二相性（あるいは順応性）自動制御換気ASV（adaptive servo ventilation）は、慢性心不全に合併するCheyne-Stokes呼吸を治療する非侵襲的陽圧換気療法として開発され、主に循環器領域で普及している。最近では、慢性心不全の睡眠呼吸障害SDB（sleep disordered breathing）以外に、肺胞低換気（PaCO2 45Torr以上）や神経・筋疾患等に対する人工呼吸としても使用されるようになってきている。
ASVは、最大PS（pressure support）圧と最小PS圧、および最大EPAP（expiratory positive airway pressure）と最小EPAPを設定することで、閉塞性睡眠時無呼吸OSA（obstructive sleep apnea）ではEPAPを自動調節（auto-EPAP）することで気道を開放し、中枢性睡眠時無呼吸CSA（central sleep apnea）では直近のフローもしくは換気量をモニタリング（機種により異なる）することでPS圧を自動調節（auto-PS）して目標一回換気量を自動設定する。ASVのこの設定に類似したモードにAVAPS-AE（average volume assured pressure support – auto EPAP）がある。AVAPS-AE は、慢性閉塞性肺疾患（COPD）などの呼吸不全や睡眠時無呼吸症候群（特に閉塞型）に対する人工呼吸として開発された。ASVでは目標一回換気量が自動で変動するのに対し、AVAPS-AEではAVAPS機能と同様に目標とする一回換気量をあらかじめ設定しておく点が異なる。
今回、舌根沈下等による閉塞性換気障害ならびに側彎・胸郭変形による拘束性換気障害を合併し高二酸化炭素血症を呈する脳炎後遺症の43歳男性に、Philips-Respironics社製のBiPAP®ハイブリッドA30（院内用）を用いて、ASVならびにAVAPS-AEモード等での夜間呼吸管理を試みた。ここでは、ASVモードやAVAPS-AEモードについての詳細と合わせて紹介したい。
略歴
1981年 札幌医科大学医学部卒業、麻酔科学講座入局
1982年10月～1983年9月 帯広厚生病院麻酔科
1984年4月～1985年3月 旭川赤十字病院麻酔科
1986年8月～1988年3月 道立小児総合保健センター麻酔科
（現：北海道立子ども総合医療・療育センター）
1988年4月～1989年12月 室蘭日鋼記念病院麻酔科
1990年4月～1993年3月 札幌医大病院救急集中治療部（集中治療部門）
1993年4月～2007年3月 札幌鉄道病院麻酔科（緩和ケアチーム兼任）
（現：JR札幌病院麻酔科）
2007年4月～ 医療福祉センター札幌あゆみの園
