抄録
はじめに
重症心身障害児(者)では、てんかんの有病率が高く、難治例も多い。臨床発作型も運動症状を伴うものから伴わないものまで様々認める。しかも、その他の異常筋緊張や不随意運動などてんかん発作と紛らわしい動作も少なくない。当施設においても以前より日常の関わりの中でてんかん性か非てんかん性か判別困難な動作が多く苦慮していた。今回、そのような紛らわしい動作時の発作時脳波を試みた。
対象
てんかんの診断があり、かつ不随意運動も多く認める当病棟入所者6名。症例1滑脳症、症例2歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、症例3周産期低酸素性虚血性脳症、症例4原因不明、症例5化膿性髄膜炎後遺症、症例6溺水後遺症。分類不能てんかん4名、レノックス・ガストー症候群2名。
方法
覚醒時に脳波測定し、同時にビデオ撮影を行った。撮影後、ビデオ確認し、紛らわしい動作時の脳波所見と照合し検討した。
結果
症例1 眼球固定し動作の停止や全身強直の動きを認めたが、脳波上は動作に関係なく持続性の棘徐波複合を認めた。
症例2 眼球固定や手指の間欠的な動きを認めた。脳波上ミオクロニー発作は1回確認できたが、みかけ上同じ動作でも脳波変化を伴わない動きも認めた。症例3−6の4例では紛らわしい動きは確認できたが、いずれも脳波上の変化を認めなかった。
考察
日頃見かけていた紛らわしい動作の多くは非てんかん性の動作であった。その撮影中の動作には、明らかなてんかん発作と思われる動作でも非てんかん性の動作が確認されており、観察だけではてんかん性、非てんかん性の判別は非常に困難であることが示唆された。鑑別には発作時脳波の測定が確実であるが、すべての入所者のすべて動作を記録することは非現実的である。そのため紛らわしい動作を観察した際には、観察した動きをできるだけ具体的に周囲に伝わるように記録していくことが重要であり、日々のスタッフ間の共通認識が必要と思われる。