抄録
はじめに
他者との関わりを得たいという思いから注目を集めるために課題行動を繰り返すA氏に対し、行動療法をもとに課題行動を軽減することを目的に取り組んだ。
事例紹介
高校生、男児。先天異常により、知的障害あり。難聴・気管切開にて話すことはできず、手話やジェスチャー、平仮名文字で簡単な単語でのコミュニケーションをとっている。
用語の定義
課題行動:他者が嫌がるような行動をとること。他害行為(叩く、蹴る、舐める等)、器物破損(窓叩き、他者の私物を投げる・壊す等)、危険行為(注入ルートを抜く、他患者の車いすブレーキやベッド柵のロックを解除する)等がある。
方法
課題行動を減らす取り組みとして、課題行動を起こしたときにA氏がスタッフに期待するような反応、叱る・説明することをせず、良い行いができたときは大げさに褒めるという対応をスタッフ間で統一した。適切な行動を増やす取り組みとして、スケジュールボードの作成、トイレや更衣等が自主的に行えるように日常生活行動チェック表の作成をした。取り組みの前後で課題行動数の集計を実施。
倫理的配慮
所属施設の倫理委員会の承認を得た。
結果
スケジュールをセットし、時間になったらトイレへ行き、着替えをする等の行為が自らできるようになった。取り組み前と比較し、課題行動が半年間で3分の1以下に減少した。
考察
リハビリや療育活動等の時間を固定し、スケジュールボードを作成して自分の行動が視覚化できたことで、予定確認行動が減少し、次の予定まで課題行動を起こさず待つことができた。自身の行動の見通しがつき、それが安心感につながったことで、課題行動が減少したと考える。また、スタッフの対応を統一することで、課題行動を起こしても反応しないことをA氏が繰り返し感じたことや、時計を見て自ら行動できることが増え、スタッフがそのことを褒めて関わることで適切な行動を強化したことも課題行動の減少につながったと考える。