日本重症心身障害学会誌
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一般演題
P-2-C17 重症心身障害施設における作業療法の役割と課題
−国立病院重症心身障害施設調査を通して−
三橋 里子
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2018 年 43 巻 2 号 p. 392

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抄録
緒言 重症心身障害は、国立病院機構(以下、NHO)、国立高度専門医療研究センター(以下、NC)各施設がセーフティーネットとして支えている重要な疾患である。国立病院作業療法士協議会ではNHOとNC対象施設に対して作業療法(以下、OT)部門の業務調査を行った。NHO、NCの重症心身障害におけるOTの役割と課題について報告する。 方法 重症心身障害病棟を有する74施設を対象に「NHOにおける重症心身障害児(者)に対するOTの現状を把握すること」を目的にメールにて調査を行った。調査内容は、OT介入の現状、専門性、教育体制について、強度行動障害に関して、その他5項目について質問した。 結果 回答施設73施設。NHO・NC重症心身障害病床数に対して41%の患者にOTを実施していた。OT対象の平均年齢は38.9歳、18歳以上が87%を占め、対象の50%は大島の分類1であった。精神科病棟も有している病院では「動く重症児(者)(強度行動障害含む)」がOT対象患者全体の約80%占めていた。OTの治療介入を国際生活機能分類(以下、ICF)に当てはめると心身機能と活動に対する介入がそれぞれ約40%だった。各施設およびNHOの教育体制について93%の職員が不十分であると回答し、研修体制・教育制度、施設間交流に対する意見が挙がった。強度行動障害に関しては、介入の難しさ、リスク管理、人員配置の在り方についての意見が挙がった。 考察 OTは心身機能、活動はじめ多面的な介入をしており、重症心身障害におけるOTの役割は患者の病態や機能面、行動の特徴、環境など総合的な観点から見きわめ、要素間の関係を整理して介入する構造化にあると考える。しかし、教育体制は未だ整備されておらず、異動というシステムの中で働くNHOのOTが質の高い医療を提供するためには、NHOのネットワークを活かして臨床、研究を共有していくこと、施設間交流および教育の推進が急務である。
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© 2018 日本重症心身障害学会
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