日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
症例報告
低タンパク血症に対し中鎖脂肪酸が有効であった重症心身障害者の一例
徳光 亜矢斉藤 剛岩佐 諭美鳥井 希恵子竹田津 未生林 時仲楠 祐一岡 隆治平元 東
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2018 年 43 巻 3 号 p. 487-492

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抄録

四肢の浮腫と低タンパク血症、低アルブミン血症を呈した67歳の重症心身障害者に対し、中鎖脂肪酸(medium-chain triacylglycerol;MCT)による治療を試みた。分岐鎖アミノ酸高配合の栄養補助飲料の摂取では症状も血液検査上も改善を認めなかったが、毎食の主食や副食に1日約9gのMCTをふりかけて摂取したところ、浮腫は消失し、血清アルブミン値の顕著な改善がみられたほか、血清コリンエステラーゼ値、総リンパ球数などの栄養指標となるデータも改善した。MCTは腸管に負担をかけずに摂取できる脂質、すなわち高カロリーの栄養補給を可能にする食品である。味も臭いもなく、食事本来の味を損なうことなく摂取でき、栄養状態を改善することができた。さらにMCTが有するタンパク質の合成刺激作用や分解抑制作用により、低タンパク血症の改善に有効であったと考えられた。

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© 2018 日本重症心身障害学会
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