日本重症心身障害学会誌
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シンポジウム2:国際的視点からみた日本の重症児(者)支援の評価と課題 −教育的支援を中心にして−
コミュニケーションの学習評価と教育実践
雲井 未歓
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2019 年 44 巻 2 号 p. 320

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抄録
コミュニケーションの充実は重症児教育において最も重視されている指導内容の一つである。これまでに、子どものわずかな応答表出を手掛かりに働きかけを行ってきた経過で、コミュニケーションが安定した事例が数多く報告されてきた。運動機能や知的機能の著しい制約下で示されるこうした変化について、我々は、学習プロセスにおける生得的な注意機能と働きかけの相互作用の視点から検討を行ってきた。本シンポジウムでは、こうした検討で得られた知見の概要と、教育実践への適用の取組について報告する。 1.注意機能の初期発達に関する検討 発達初期にみられる注意機能としては定位反応と期待反応を挙げることができる。定位反応は最も早期に出現する選択的・能動的な注意反応であり、情報を取り入れ必要な組織的活動を起こすための高次な認知活動の基盤を形成する。期待反応は、特定の事象を、先行する刺激によって予期し、事象の生起まで注意を続ける反応である。Yesの意思表出や表象機能の基礎を形成するもので、乳児の「イナイイナイバー」遊びでは約6か月齢で、「イナイイナイ…」により「バー」への期待が生じる。これらの注意機能は心拍数の一過性変動に反映されることから、我々は行動観察と心拍反応を手掛かりに、重症児における定位反応と期待反応の発達的特徴および促進要因の検討を行ってきた。その結果、定位反応が全体的に不活発な場合でも、人の顔・姿や接触刺激の呈示下では、名前の呼びかけに対して定位反応が生起しやすくなることを明らかにした。また、働きかけを先行刺激と対にして呈示することで、行動上の変化や心拍上の期待反応が生起するようになった事例を報告してきた。これらにより、重症児では発達初期の注意機能と働きかけとの相互作用が、コミュニケーション関連行動の学習における重要な要因であることを指摘した。 2.コミュニケーションの実態把握に関する検討と教育実践 日本では学齢重症児のほとんどが特別支援学校に就学し、その多くが自立活動を中心にした教育課程の下で教育を受けている。自立活動は教科と異なり指導内容が子どもの実態に応じて設定される。そのため、的確な実態把握が特に重要であるが、コミュニケーションに関しては信頼性・妥当性のある評価法が従来十分に示されてこなかった。この点について我々は、期待反応を中心に15の学習項目を評価する行動質問票を作成し、「学習把握表」(小池ら,2011)として整備した。学習把握表を、一人の児童について担任と副担任がそれぞれ評価した結果は、高い一致度を示した(n=78, κ=.63, p<.05)。また、ROC分析の結果、15の学習項目のうち8項目以上の達成をもって、音声単語の理解語数11以上の児童を峻別できることが示された(感度.78、特異度.79)。これらの結果は学習把握表の信頼性と妥当性を示すものであり、コミュニケーションの実態把握法としての有効性が指摘できた。 教育実践への適用としては、学習把握表による評価結果を考慮して指導を計画・実施する取組が報告されてきた。また、近年我々は、日常的な授業の中で児童と教師の間に生起する相互作用場面を、学習把握表の15項目に従って分類し、働きかけの傾向や学習評価との関連を分析した。このうち、「音声単語の理解」の項目に途上から達成への変化が見られた事例では、授業において「音声単語の理解」を促す働きかけとともに、当初から達成であった「期待反応の表出」や「視覚サインの初期理解」に関連した働きかけも多く観察された。それより、音声単語の学習過程で、期待反応や視覚サインに基づく表象機能が関与したことが推測された。この事例から、学習把握表に基づく相互作用の分析は、授業における教師の働きかけの意義を整理して説明する有効な方法となる可能性が指摘できる。今後は、分析結果が教師や授業に及ぼす効果について、さらなる検討が必要と考える。 略歴 2002年3月 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(博士後期課程)修了/2002年4月 東京小児療育病院 心理職/2004年4月 鹿児島大学教育学部 講師/2006年4月 同准教授(現在に至る) 研究分野:障害児心理学、認知生理心理学 研究内容:重症心身障害児の認知発達とコミュニケーション支援、学習障害児の読み書き困難に対する支援 著書:『障害の重い子供のコミュニケーション指導―学習習得状況把握表(GSH)の活用―』(小池敏英らと共著)、ジアース教育新社、2014年ほか
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