日本重症心身障害学会誌
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O-5-02 当センターの入所者における呼吸器感染による重症例の報告
林 安里伊藤 正寛原田 有樹依藤 純子奥村 啓子小川 勝彦高野 知行山﨑 正策
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2019 年 44 巻 2 号 p. 350

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抄録

背景 この10年間で入所者平均年齢は43歳から51歳と高齢化し、重症度や医療ケア度が上昇し、急変時に難渋することが増えている。2018年度に重症呼吸器感染症を計4例経験したので報告する。 症例1 49歳女性、基礎疾患は脳性麻痺、既往歴に歯肉炎・膿瘍、誤嚥性肺炎、左膿胸、大島分類2。栄養は経鼻チューブ管理、姿勢により唾液誤嚥あり。38度の発熱を認め、抗生剤を開始。第3病日CTで右膿胸と診断。第5病日転院し、右胸腔ドレーン留置と洗浄と抗生剤を30日間投与し治癒。 症例2 48歳男性、基礎疾患は脳性麻痺、既往歴に誤嚥性肺炎、大島分類2。座位保持が困難となり、嚥下造影検査(VF)で誤嚥あり。栄養は刻み食と水分にとろみを追加。38度の発熱を認め、抗生剤を開始。第5病日単純写真で右肺膿瘍と診断。第8病日転院し、抗生剤を40日間投与し治癒。 症例3 52歳男性、基礎疾患は脳性麻痺、既往歴に誤嚥性肺炎、肝腫瘍、膀胱破裂と腹膜炎後に寝たきりとなり、大島分類1。VFで誤嚥あり、栄養は経鼻チューブ管理に変更。頻回のむせと38度の発熱を認め、抗生剤を開始。第6病日単純写真で左肺炎・胸水と診断。転院し、胸水穿刺と抗生剤を26日間投与し治癒。 症例4 56歳女性、基礎疾患は脳性麻痺、既往歴に誤嚥性肺炎、大島分類2、ずり這いができなくなり、座位保持が困難、食事は全介助に変更、刻み食と水分にとろみを追加。嘔吐後に38度の発熱を認め、抗生剤を開始。第5病日CTで左肺膿瘍・胸水と診断。画像所見の改善がなく、第11病日呼吸器外来を受診し、抗生剤を30日間投与し治癒。 考察 全例ともに基礎疾患は脳性麻痺、平均年齢は41歳(46〜56歳)、運動機能の低下、誤嚥性肺炎の既往、日常的な誤嚥を認めた。外科的処置をされた症例1は歯肉炎・膿瘍があった。 まとめ 脳性麻痺は経時的な機能低下を認め、呼吸器感染は40歳台でも重症化し、誤嚥の予防と口腔内管理が重要である。 申告すべきCOIはない。

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© 2019 日本重症心身障害学会
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