日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-5-03 重症心身障害児(者)病棟で経験したパラインフルエンザウイルスに関連した集団感染事例
井上 美智子吉永 治美産賀 温恵水内 秀次形山 優子
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2019 年 44 巻 2 号 p. 351

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抄録

はじめに パラインフルエンザウイルスは乳幼児が発症するかぜ症候群の原因ウイルスの一つであるが、老人施設などにおいて集団発生の報告がある。今回、当院重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))病棟においてパラインフルエンザウイルスに関連した集団感染を経験したため報告する。 経過 X年4月14日から5月4日にかけて、58名が入所している病棟において23名に発熱を認めた。発症者の年齢は11歳から60歳。発症者は第1例の発症後4日目に6人が発症し、5日目からは徐々に発症者は減少した。発熱については1名が35度以下の平熱のため36.7度で発熱とみなしたが、それ以外は最高37.7度から40.9度であった。38度以上の発熱を19人、39度以上は14人に認めた。38度以上を示した19人の38度以上の発熱期間は1日〜6日(平均2日)であった。発熱以外の症状は19人に軽微な咳や鼻汁などの感冒症状、3人においては発熱以外の症状はなかった。しかし、4人が肺炎と診断、それ以外に5名に点滴加療を行った。なお、気管切開を施行している5人の内4人に対して点滴加療を行った。経過中、各種ウイルス迅速検査等を施行したが、全て陰性であった。このため、8名においてmultiplex reverse transcription PCRを行ったところ、全例にパラインフルエンザウイルスを検出した。全例回復し、後遺症は認められなかった。 まとめ 今回、接触および飛沫感染に対する感染予防策をとったが、多数の発症者を認めた。今回の発症者では突然高熱が出現するが、その他の症状は軽微なことが特徴的であった。しかし、4名は肺炎を発症し、気管切開施行者は高率に点滴加療を行うなど、重症化の可能性を認めた。重症児(者)病棟においてパラインフルエンザウイルス感染は流行の危険があり、さらに重症化に対し注意が必要と考えられた。 申告すべきCOIはない。

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© 2019 日本重症心身障害学会
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