抄録
はじめに
摂食嚥下外来を開設して10年、診療では、摂食・嚥下機能の評価を行い、安全な経口摂取と成長発達を促す方法の検討、指導を行ってきたが、「食べることを嫌がる」という主訴で受診されるケース(以下、摂食拒否群)が散見し、対応に苦慮していた。今回、過去に受診した全患者から、摂食拒否群を抽出し、後方視的に検討したので報告する。
対象と方法
摂食拒否群を抽出し、診断名ごとの割合、初診時年齢、通院期間、診療を終了できた割合と終了までの期間、経過を振り返り、今後の課題を検討した。
結果
診断名ごとの摂食拒否群の割合は、超低出生体重児に高いことがわかった。初診時年齢は、平均3歳11か月となっていた。診療の流れは、症例ごとに有効と思われる対応方法をアドバイスし、STでフォローしながら、6か月ごとの再診となっていた。19例が外来診療を終了しており、うち5例は、誤嚥を否定する目的で1回のみの受診、残り14例の平均受診回数は、3.4回で、拒否が軽減し、母の不安が解消したことで終了となっていた。その平均受診期間は2年7か月であった。
考察
摂食拒否の症例を振り返ってみて、原因や改善のきっかけ、経過の分類を試みたが、原因が単一でなく、複雑に絡み合っており、分類することが困難であった。しかし、共通することとして、拒否の理由を慎重に観察し、本人の思いを受け止めながら、受け入れられる条件を見つけ出し、ゆっくりと変化させていくことが重要であることが分かった。母親の不安や焦りを軽減し、そのままの子どもの状態を受け入れて愛情を持って成長を見守れるように支えることが重要と思われた。今後の対応として、子ども同士、母親同士の交流ができること、感覚統合やペアレントトレーニングの技法を導入し、よりよい対応ができる摂食嚥下外来にしていきたい。
申告すべきCOIはない。