抄録
はじめに
重症心身障害児(者)をもつ若い親は、子どもの将来が心配、子どもを残して逝けないという思いがあることが明らかになっている。しかし、終焉が迫っている高齢の親は、自分の人生をどのように捉えているのか定かではない。そこで施設に入所している壮年期重症心身障害者の親自身のライフスト-リーを明らかにした。
方法
重症心身障害児(者)施設に入所している壮年期の重症心身障害者の親3名を対象に、非構造化面接調査を行った。
結果
濃密に語られた時期は、A氏は【障害児を生んだことによる肩身の狭さ、専門病院の受診、障害の受け入れ】で、人生のテーマは「障害を持っている子どもの親と悩みを共有し、触れ合い、趣味をとおして人と関わることで楽しい有意義な人生」であった。B氏は【趣味と家庭菜園:在宅での療育・子育て】の時期で、人生のテーマは「スポーツや趣味を通して、頑張ることができた。子どもの病気に向き合い、頑張っている我が子を私たち二人で見守り、自分たちのできることをやりぬいてきた人生」であった。C氏は【障害児の出産、子どもの入所、ボランティア】の時期で、人生のテーマは「一人娘として家を守ることができた。趣味を通してたくさんの人とふれあえた。子どもは障害を持ってしまったが家族と一緒に楽しむことができた人生」であった。
考察
濃密に語られていたのは障害児を産み育てる時期であり、障害児の誕生に対する戸惑いや子育てへの葛藤が大きかったためと考える。子育ての中で家族や友人に支えられたことにより自身も成長し、障害児をもつ親としての自身を受け入れ、他の親との交流で悩みを共有し、子どもと向き合い様々な困難を乗り越えていた。さらに趣味等の楽しみを見いだし、親自身の人生を前向きに生きることができていたと考える。
結論
親は人生を満足のいくものとして捉えており、親の気持ちに寄り添う支援を続ける重要性が示唆された。
申告すべきCOIはない。