抄録
はじめに
当院の日中一時支援事業において、初めて外国人重症心身障害児を受け入れるに当たり、本児と家族を取り巻く環境を整理し、意思疎通を図る工夫をした事で、利用継続に繋がった。
症例
5歳女児。タジギスタン国籍。出生時より右頭部の突出と左上肢痙性を認めた。その後、左半身麻痺はあるが、歩行可能、発語などの発達を認めていた。2歳時に髄膜脳炎後、脳室腹腔内(VP)シャント留置。歩行不能となった。来日、歩行不可能だが、寝返りや座位姿勢での移動は可能。意思疎通は簡単な会話が可能。
方法
(1)カンファレンスを実施し、課題を把握。
(2)課題(制度、文化、言語)に対するシステム構築。
結果
医療・福祉制度を利用できるために、家族、病院、行政、相談支援事業所などの多機関の間で、カンファレンスを実施した。その際、通訳者に介入してもらい、家族の意向を伺い、課題の解決を図った。しかし、受け入れを継続するに当たり、新たな課題が見えてきた。文化や育った環境、家族の思考の違いから、本児の日々の細かな体調の変化を把握することが困難だった。そのため、他事業所とも情報共有し、利用時の急変にも対応した。
考察/結語
今回、当事業所において、初めての症例に対して、多職種で迅速に対応した結果、早い段階からサービスの利用が可能になった。文化や宗教学的な背景を理解し、課題に取り組んだ事や、本児や家族、スタッフ双方のコミュニケーションスキルを工夫することで、円満な人間関係が築かれたと考える。さらに体調の変化に対応し、地域と連携することで、日本での医療・福祉を利用できるようになったと思われる。今後も、外国人重症心身障害児を受け入れる事を予測して、今回の経験を活かしたい。
申告すべきCOIはない。