抄録
はじめに
小児領域の理学療法介入の体系は確立されておらず、急速なエビデンスの蓄積が望まれている。当センターでは重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))に対して、週1〜2回理学療法(以下、PT)を行っているが、頻度の違いによる治療効果の検証も十分に行えていない。今回、5名の重症児(者)に対して1か月間、週3〜4回PTを行った。その内1名に対する検証を行い報告する。
対象
30歳 女性 頭部外傷後遺症(左片麻痺) GMFCSレベルⅤ
脊柱側弯(右凸Cobb角40°) 左股関節可動域制限(屈曲70°・伸展-30°)
端座位姿勢:頸部後屈、胸椎右凸・後弯を呈している。骨盤は後傾・左挙上し、左殿部での支持は難しい。
方法
2018年1月〜2月(PT実施17回・3.4回/W)評価として股関節可動域測定と端座位姿勢を写真撮影し前後比較を行った。
目標:座位の安定性向上
治療:臥位にて左腰背部の柔軟性を引きだし、左大腿筋膜張筋のアライメントを修正。座位にて骨盤後傾を促し、腹圧を高めて体幹を抗重力伸展位で保持させる。
結果
腰背部と胸郭後面の柔軟性が向上。大腿筋膜張筋アライメントが改善し左股関節引き込みが軽減。左股関節屈曲70°⇒90°伸展-30°⇒-20°に拡大した。座位では左殿部支持が容易となり、左右差が軽減した。また、体幹の抗重力伸展活動が促され、頸部左側屈が軽減、正中位保持や回旋動作が行いやすくなった。
考察
今回の結果から、重症心身障害者に対する集中訓練は効果がある事が分かった。しかし、集中訓練終了後は週1〜2回の頻度でPTを行ったが効果を維持することはできず、1か月後に元の機能に戻った。先行研究でも日常生活での実施が困難な運動レベルのものは集中訓練の効果が低下しやすい傾向にあると報告されている。引き続き、集中訓練後の効果を維持していくために必要な事を検討していかなければならないと考える。
申告すべきCOIはない。