抄録
研究目的
食事に薬を混和せずに安全かつ確実に服薬できる補助手段としてのイソマルトオリゴ糖(以下、オリゴ糖)の有用性を検討した。
研究背景
適度に粘性がある食品は嚥下が容易で薬の味や臭いを覆い隠すことから、食品に薬を混和して服薬させる工夫は広く行われてきた。一方で食品の成分や物性により薬との相互作用がみられるので注意を要する。
当施設は従来、家庭での服薬方法を継続させる・あるいは介助者の判断により薬を食事に混和していたが、楽しい食事の提供を目的に混和を禁止した。ところが、散剤を食器上で少量の水に溶くためにスプーンですくいきれない・水によってむせるなどの問題点が生じ服薬方法を検討する必要があった。
研究方法
1)嚥下補助剤の検討
オブラート、嚥下補助ゼリー、とろみ剤、オリゴ糖について服薬上の問題点・課題点を比較検討した。
2)食器の検討
散剤与薬時に用いる食器の、汎用性・薬剤残留・コストを検討した。
3)薬剤への影響
相互作用確認の為、嚥下補助剤を用いた服薬開始前後において薬剤の血中濃度に差が生じるか調べた。
結果
嚥下補助ゼリーは離水・薬の苦味の発現・コスト面で課題がみられた。とろみ剤は安価で調製容易だが、薬の種類によりとろみに包まれた錠剤が崩壊しなかった報告があり適用は難しいと考えた。オリゴ糖は一部の薬剤で吸収遅延や抑制の可能性があるが、安価・味覚良好・付着性無く温度による変化が無いことから内服薬の嚥下補助剤はオリゴ糖を採用。与薬時に用いる食器は角の無い浅い湯呑を採用した。オリゴ糖を用いた服薬開始前後において薬剤の血中濃度に差が生じるか確認したが、有意差は見られなかった。
考察
日常的な事だが内服薬の嚥下補助剤に関する報告は数少ない。本研究は入手しやすい食材を用いた服薬上の問題点・課題を明らかにしたに過ぎず、摂食嚥下障害に関する評価は行っていない。今後、詳細な研究を行う必要がある。
申告すべきCOIはない。