抄録
はじめに
食物アレルギーをもつ、重症心身障害児(者)(以下、重症児 (者)は増えてきていると考えられるが、食事形態が特殊であること、自覚症状の評価が困難であること、未摂取の食材が多くあることなどの理由から、負荷試験が行われないままになっていることが多い。その結果、本来は不要である食材の除去が行われ、また抗アレルギー剤を漫然と投与されているケースも見受けられる。今回、重症児2名に対し、食物負荷試験を行ったので、報告する。
症例1
5p- Cats cry syd.の6歳女児、全介助。バナナ摂取で口腔内の痒みと顔の紅斑、キウイ摂取で嘔吐と喘鳴、非加熱卵の接触で顔の腫脹あり。未摂取である桃/パイナップル/エビ/カニに関して、院内で4日間かけて食物負荷試験を行った。負荷する食材はミキサー食にて提供した。結果、いずれも陰性であり、制限解除とした。
症例2
脳性麻痺の14歳女児、全介助。鯖摂取で膨疹、全卵と桃摂取で顔と首に紅斑出現歴あり。未摂取であるパイナップルに加え、加熱卵黄、桃、鯖について、院内で4日間かけて食物負荷試験を行った。負荷する食材はいずれもミキサー食にて提供した。加熱卵黄、桃、パイナップルに関しては陰性であり、制限解除とした。鯖は、摂取6-7時間後から嘔吐頻回となった。鯖によるアレルギー症状と考え、鯖は制限継続とした。ただし出汁に関しては摂取可能とした。
考察
今回、2名の重症児に対し、のべ8回の食物負荷試験を行った。Grade3のアレルギー症状が出現したが、適切な対応により、症状は軽快した。
重症児に対しても、食物負荷試験は安全に施行でき、制限をなくすことで食事の幅を広げ、また不要な抗アレルギー剤の投与を減らすことができると考えられた。
申告すべきCOIはない。