日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
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O-27-01 当センター入院患者におけるESBL検出状況
渡辺 美夏石島 亜純久保田 雅紀相田 文彦竹内 東光森川 昭廣野田 真一郎
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2019 年 44 巻 2 号 p. 414

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抄録
目的 近年、広域スペクトラムの抗菌薬の使用量が増加するとともに薬剤耐性菌が問題となっている。中でも、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(以下、ESBL)は急速に増加傾向である。 今回、当センター入院患者を対象に過去のESBL検出状況を調べ、さらにその感染について検討したので報告する。 対象 2012年1月〜2018年12月までの7年間における当センター入院患者147人(男性74人、女性73人) 方法 当センター内検出菌報告書を利用し、1患者初回検出を1とし、7年間のESBL検出状況について調べた。ESBL感染の関連因子として入院患者全員の経腸栄養、尿道カテーテル・人工呼吸器の使用状況をカルテから調べ、各々のESBL感染危険率をオッズ比を用いて検討した。次に、ESBL検出者の再発(保菌)状況と入院患者の居室状況(各年4月1日)を調べ検討した。 結果 7年間一度でもESBL検出が認められた人は32人であり、全体の22%を占めた。年別検出状況では、2012年は4人で、2013年〜2018年の6年間で各年の検出は7〜12人だった。オッズ比による関連因子の検討では、尿道カテーテル・人工呼吸器使用者で高値であった。ESBL検出者の再発(保菌)状況も15人と高い傾向がみられた。 考察 調査期間中でのESBL検出状況は、2012年に4人で、最も多く検出された2017年は12人と3倍の増加が認められた。関連因子の危険率検討では、体液に接触するカテーテル等の使用者ほど伝播リスクが大きかった。また、再発(保菌)者も15人と認められ、除菌の難しさが窺える。病棟別でも感染の広がりには差があり、経腸栄養や寝たきりの人が少ない病棟ほど感染は低かった。逆に、カテーテル等の使用が多い病棟ほど感染が広がりやすく、さらにESBL検出者がいる部屋から新たな感染者が出る傾向がみられた。医療関連感染の20〜40%は、医療従事者の手指を介した接触感染であるとも言われている。今後の感染対策の強化が必要だと思われた。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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