日本重症心身障害学会誌
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O-28-02 生活介護事業所での事前ケアプランニング(ACP)の取り組み
稲田 律子船戸 正久平林 潤子
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2019 年 44 巻 2 号 p. 418

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抄録
はじめに ACPを実施することで患者の医療に関する満足度が向上し、家族の心理的負担や抑うつ、不安が改善することが明らかとなっている。しかし、重症心身障害者の生活介護事業におけるACP取り組みの報告はない。 今回、生活介護事業所N(以下、N事業所と記す)で、基幹病院と連携しACPに取り組んだ。結果、地域連携の必要性、看取りの意思決定を明確にし、利用者のQOLの向上、逝去後の家族の精神的負担の軽減を図ることができたことを報告する。 事例報告 利用者(A氏):30歳男性、ウイルス性脳炎、てんかん、腎結石、呼吸障害、胃瘻、大島分類1 家族構成:母親と同居、近所に姉夫婦が在住 経過:2016年12月、腎不全から危篤状態となり入院。状態が回復し、自宅で訪問看護と母親の介護で過ごしていた。A氏の状態が落ち着いてきたため母親がN事業所の再開を希望。その際、基幹病院との話し合いで急変時の非蘇生(DNAR)の希望が判明した。N事業所でも急変時DNAR で安らかに看取ってほしいとの希望があり、基幹病院主治医から看取りの対応も含めたセンター医師への紹介状を受けとった。その後、医師を含めたN事業所スタッフで検討し、ACP を作成、倫理委員会で検討する予定であった。母親にはACPを家族と共有するよう伝えた。その後、A氏は以前と同じようにN事業所で生活介護を受けていたが、自宅で急変し家族の車で基幹病院に搬送、看取りの結果となった。通夜の席で母親は、今回の選択が一番よかったことを涙ながらにも笑顔も見せながら話された。 結語 ACPによりスタッフと家族の理解が深まり、お互いが安心して質の高いケアの提供が行えるようになった。同時に書面を用いて家族間で話し合い、家族全員が看取りに対して協働意思決定し、利用者の死をすみやかに受け止める結果につながったと考える。 これらのことから、ACPは質の高いケアの提供、利用者のQOLの維持や家族の精神的な安寧のために有用であったと考える。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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