日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-28-03 家族のない重症心身障害者における、多職種による方針決定と看取りの経験
杉森 光子上山 和恵伊東 妙子池田 秀子中村 千春高橋 美智明城 和子高橋 佳代子大瀧 潮上石 晶子有本 潔木実谷 哲史
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2019 年 44 巻 2 号 p. 418

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抄録
はじめに 意思表示できない利用者の治療方針は、家族と医師の話し合いで決定されることが多い。また終末期は個室での医療行為が中心となり、関わる職員が限られることが多かった。治療方針決定に多職種が関わり、看取りを行った症例について報告する。 症例 70歳男性。細菌性髄膜炎後遺症で、寝たきり、意思疎通は困難。家族なし。成年後見人2名。13歳から当院で生活している。栄養は胃瘻からの注入。 経過 64歳時S状結腸癌(StageⅡ)、3か月後上行結腸癌の手術を受けた。化学療法開始後気道および尿路感染を反復するため、治療検討委員会に諮り中止した。術後1年10か月右肺に転移巣が出現、徐々に増大した。職員間で話し合い、化学療法は行わず普段通りの生活を続けることを希望し、治療検討委員会で承認された。終末期に関して病棟職員に行ったアンケートでは、「苦痛を緩和」しながら、「自然に」「当院」で「見守られながら」死を迎えたい、という意見が多数を占めた。術後4年9か月 両側肺に多発転移巣が出現、余命3-6か月とされた。カンファレンスで上記の方針を確認するとともに、以前の様子を知る職員やリハビリスタッフから、本人が好むものの情報を得た。術後5年6か月一時危篤状態になったが、緊急カンファレンスで、採血も含め痛いことは行わないこと、必要時抗菌薬・鎮痛剤内服、酸素吸入を行うこととした。鎮痛剤内服したが、もともと苦痛様の表情がなく内服しても変わらないこと、血痰・血尿・下血がみられたことから中止した。呼吸困難にステロイドが著効したため、酸素投与とともに続行した。術後5年8ケ月で亡くなるまで、大部屋で日常の活動に参加し、誕生日を祝い、若い頃好きだった鰻を食べ、お祭りにも車椅子で参加することができた。 まとめ 病棟職員全員を含む多職種が治療方針決定に参加することで、最期まで多くの職員と関わりながら、普段通りに近い生活を送ることができた。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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