日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-28-07 重症心身障害者の看取りの実際
坂本 幸繁初田 里佳
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2019 年 44 巻 2 号 p. 420

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抄録
はじめに 「障害者福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」では、本人の意思決定が困難な場合の日々ケアに携わるスタッフによる意志推定について述べられており、「本人を良く知る関係者が集まって、(中略)根拠を明確にしながら障害者の意思および選考を推定する」と述べられている。これを踏まえ、胃体部癌の重症心身障害者を看取った際に、痛みのない時との表情の変化に着目し、又、患者の疼痛の程度を多職種で共有することで苦痛の早期把握・対応に繋げることができたのでここに報告する。 症例 66歳 女性 主病名 脳性麻痺 胃体部癌 胃体部癌にて胃部分切除術実施するが、結腸および腹膜播種を認めた。胃空腸バイパス術のみ施行にて閉腹。予後3〜6か月と伝えられる。 後見人、家族より「痛い思いをさせるのが一番辛い」「痛くなく、辛くなく、それをなるべく感じさせない状態をキープして欲しい」と終末期医療に対し、希望があった。 本人の意思や苦痛の状態を推察するため、バイタルサインおよび僅かな行動や表情、睡眠時間の変化に着目した。苦痛と考えられる行動を以前の状況や普段の行動を鑑みて規定し、その時の状況と苦痛の出現の関連をチェックするシートを作成した。患者に関わる全ての職種が記入できることとし、チェックシートを用いて苦痛出現の頻度を観察し、苦痛が推察される行動が増える毎にWHO除痛ラダーに準じてペインコントロールを実施した。早期にペインコントロールを次の段階へ引き上げることで苦痛を感じる時間を減らすことができたと考える。その結果、永眠された際に家族より「ここに居られて本人は幸せだと思う」「この子は本当に幸せだったんですね」との言葉が聞かれた。 まとめ 重症心身障害者の意思の汲み取りは難しいが、痛みのない時との比較による表情や行動の観察を行うことで意思の推察に繋げることができた。又、その際に多職種の視点による観察が重要であった。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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