日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-28-06 明るい最期を迎えるために
山倉 慎二浅野 一恵小杉 百合子
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2019 年 44 巻 2 号 p. 420

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抄録
はじめに  ガン末期ではない終末期を迎えた2症例を経験した。延命にこだわることなく、人生の最期を豊かに過ごすことを目指した人生会議を行い、穏やかで明るい終末期を過ごすことができたので報告する。 症例1  38歳女性。脳性麻痺。横地分類1A、経管栄養。胃食道逆流症のため、2014年に逆流防止術を行ったものの再燃した。家人の希望で再手術はせず、時折嘔吐はみられたものの姿勢と食形態の管理により注入を継続していた。2018年12月からは膵炎を併発、2019年5月より栄養の注入を全く受け付けなくなり、注入ごとに苦悶様に嘔吐することを繰り返すようになった。スタッフによるカンファレンス、家人との話し合いの中で、積極的な注入をやめて本人が嘔気を感じない程度の少量の栄養のみ注入するように方針を変えた。 症例2  9歳男児。ミトコンドリア脳筋症。横地分類1A、人工呼吸器使用。2018年より頻回に呼吸器感染を繰り返すようになった上に膵炎も併発した。2019年4月より呼吸器感染から回復できなくなり、注入する度にSpO2の低下を来すため、栄養の注入が困難になっていった。スタッフ間、家人との話し合いにより、点滴をせずに注入可能なわずかな栄養のみで最期までの期間を過ごすことを決めた。 結果  2症例とも、延命よりも残された命の質を選んだことで、本人が苦痛から解放され、家人やスタッフも穏やかな気持ちで接することができるようになった。それまで控えていた外出などの活動に目を向けることができ、スタッフの中にも残された命を輝かせるための前向きなチャレンジ精神が芽生えた。 考察  人生の最期をいかに穏やかに迎えることができるかどうかは、重症心身障害児(者)支援の最大の腕の見せ所である。家族と話し合い、スタッフ間で終末期の迎え方を共有することで、命にしがみつくことなく、明るい最期を迎え、心残りなく生き抜くことができると思われる。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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