抄録
はじめに
肺内パーカッションベンチレータ(以下、IPV)は重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の呼吸障害に対して使用され治療効果が示されているが、長期使用効果の報告は少ない。今回、重症児(者)に1年以上継続的にIPVを実施したため、その効果を報告する。
対象と方法
対象は当施設入所者で2015年4月〜2018年11月の間にIPVを継続的に1年以上実施した5例(男性3例、女性2例、年齢9〜40歳、中央値25歳)とした。5例とも気管切開例で、うち3例は人工呼吸器管理。疾患分類は、脳性麻痺2例、低酸素脳症後遺症、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症が各1例ずつである。IPV実施頻度は、1日1回を週2〜5回実施。作動ガス圧は20〜30psiで、駆動頻度はeasy5-normal12-hard7を各3分実施が4例、easy5-easy3-normal12を各3分実施が1例であった。
方法は、IPV介入前後1年間の肺炎罹患回数とSpO2の平均値を比較する。
結果
介入前の肺炎回数は合計で7回、介入後は5回と減少傾向がみられる。症例ごとを比較すると、介入後に減少したものが2例、増加したものが2例、変化がなかったものが1例であった。
SpO2の5例の平均値は、介入前が97.13%、介入後が97.01%で概ね変化がみられていない。1例ずつの比較では、介入後に上昇しているものが1例、低下しているものが2例、変化がなく維持されているものが2例であった。
考察
介入前後の5例を比較すると、肺炎回数は減少している。長期使用により呼吸機能維持にも効果があると考えられる。5例のSpO2平均値では概ね変化がない結果となったが、介入後1年間の経過をみると上昇傾向を示す例が4例であった。肺炎罹患直後の効果だけではなく、継続した使用により呼吸機能の維持・改善に効果があったと考えられる。
重症児(者)は肺炎罹患により、重症化や機能低下をきたしやすい。本治療は、長期に亘る呼吸機能維持への有効性が示唆された。本研究では症例数が少ないため、今後も引き続き検討が必要である。
申告すべきCOIはない。