抄録
背景
空気嚥下症は繰り返す過剰な空気嚥下により病的な腸管拡張を来し、腹部膨満、腹痛、便秘などを来す病態である。知的障害児者でより頻度が高く、機械的腸閉塞から重症化することがある。重症心身障害児に発生した空気嚥下症から機械的腸閉塞となり外科的介入を要した3例を経験した。
症例1
メビウス症候群、知的障害、中枢性呼吸不全、歩行障害のあるTPPVの13歳女児。学校ではないが自宅で空気嚥下あり。排ガス減少と腹満、活気不良を主訴に受診、腹部Xpで結腸異常拡張を、腹部CTで腹水を認め横行結腸捻転の診断で開腹による整復術を行った。消化管ガス駆除剤、胃瘻からの脱気で再発はない。
症例2
Young-Simpson症候群の男児。いざり可能、経鼻胃管による全経管栄養、空気嚥下で腹満を来しやすかった。6歳で複数の横行結腸捻転既往あり保存的に改善。8歳で胃残増加と異常な腹満が出現し腹部Xpで著明な結腸拡張を呈し腸閉塞が疑われた。Clonazepam内服、胃管開放、2回の経肛門イレウス管による整復術を行なうも再発。結腸の固定不良あり、横行結腸と下行〜S状結腸2か所の捻転を認め結腸部分切除と虫垂皮膚瘻造設。虫垂皮膚瘻からの定期的脱気で再発はない。
症例3
アテトーゼ型脳性麻痺の18歳女児、経口と胃瘻の併用。側弯変形が強く空気嚥下のため腹満が常在していた。腹満増悪と血性胃残を主訴に受診。腹部CTで広範な小腸拡張と腹水を認め盲腸捻転の診断で開腹による整復術を行った。連日浣腸、消化管ガス駆除剤で再発はない。
考察
Lekkasらの報告では知的障害者の8.8%に腸管拡張がみられ、空気嚥下、腸管低緊張、過剰な結腸間膜などを要因に挙げている。今回の3症例においても精神的ストレスと解剖学的異常が複合要因となっている可能性があり、空気嚥下をしやすい重症心身障害児では腸管ガス異常の早期発見が必要と考えられた。
申告すべきCOIはない。