日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
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一般演題
P-3-07 学童期脳性麻痺児の股関節脱臼術後に対するリハビリテーションによる再発予防
迫 悦子髙嶋 美和菊次 幸平豊田 恭正石橋 大海中村 英智
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2019 年 44 巻 2 号 p. 431

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抄録
はじめに 股関節脱臼は脳性麻痺の子どもにみられる最も一般的な整形外科疾患である。今回、更衣介助時に左股関節痛を発症し、左股関節脱臼の診断を受けた10歳代女児の症例において、計画的な理学療法(PT)、作業療法(OT)にて術後再脱臼なく管理ができたので報告する。 事例紹介 11歳5か月女児。生後1か月時にRSウイルス感染し、低酸素性虚血性脳症を発症、5か月時にウエスト症候群と診断された。運動発達は定頸1歳半、寝返り2歳で、独座不能だが歩行器歩行可能。9歳2か月時、更衣介助時急な啼泣、左腸骨部の皮下出血・内出血があり、X線単純撮影で両側臼蓋形成不全、左股関節脱臼と診断され、観血的治療(OSSCS:選択的痙性コントロール手術+大腿骨内反骨切り術+腸腰筋外側移行術)が施行された。その後、再脱臼予防と臼蓋後壁の形成および特別支援学校での活動・参加を目的に当センターでのPT、OTを開始した。 方法 術後8週目より3回/週の頻度でPT・OTを開始し、背臥位で臼蓋後壁に徒手的な圧刺激を加える運動と傾斜角度を前方25°とした立位台での立位を30分行った。その後、段階的に傾斜角度を変更し、10週目より前方15°、13週目より傾斜なしの直立とした。また、他機関と連携し、学校と母親へ介助方法の指導も併せて行った。半年に1度CT、 X線単純撮影による評価を行った。 結果 CT検査では、左臼蓋後壁が形成されている。術後2年経過時も再脱臼はなく、痛みも出現していない。 考察 痙性麻痺を呈する重症心身障害児(者)に対して、股関節脱臼による痛みの軽減や陰部保清の目的で観血的治療が行われるが、その後再脱臼を起こす症例を経験する。股関節脱臼は重症例によくみられる合併症であり、座位保持、衛生面など日常生活にも与える影響が大きく、その予防や治療は重要である。本事例では、股関節手術後、計画的な理学・作業療法にて、再脱臼を起こすことなく管理ができた。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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