日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-15-06 重症心身障害児(者)の筋緊張亢進に対する振動刺激の即時効果について 一症例検討
渡久地 政志大江 友加里小野島 裕二栗原 淳荻原 朱摩子三方 崇嗣
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2019 年 44 巻 2 号 p. 481

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抄録
はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は過剰な筋緊張の亢進がみられ、日常生活の支障をきたす。近年、振動刺激が筋緊張の抑制に作用することが報告されており、ハンドマッサージャーを用いて脳卒中患者の痙性の治療に応用されている。しかし、重度の筋緊張亢進に対してハンドマッサージャーのように限局した振動刺激では効果が乏しい。そこで重症児(者)の筋緊張亢進に対して高頻度胸壁振動排痰補助装置スマートベストを用いて広範囲同時に振動刺激を行い筋緊張に与える影響を検証した。 方法 対象は、脳性麻痺患者(50歳代の女性、大島分類1)とした。方法は、振動刺激前に下肢関節可動域(膝関節屈伸・足関節底背屈)および筋緊張の評価スケールであるModified Ashworth Scale(以下、MAS)・Modified Taedieu Scale (以下、MTS)の測定を行った。振動刺激には高頻度胸壁振動排痰補助装置スマートベストを用いて、大腿部に15Hzの振動刺激を3分間実施し、その後上記の評価内容を再測定した。 また、本検証を行うにあたり当院倫理委員会の承認および主治医・患者家族の同意を得て行った。 結果 振動刺激前は、関節可動域:膝関節伸展-10°屈曲80°・足関節背屈5°底屈15°、MAS:膝関節屈伸3・足関節底背屈3、MTS:膝関節屈伸4・足関節底背屈4であった。刺激後は、関節可動域:膝関節伸展-10°屈曲110°・足関節背屈15°底屈25°、MAS:膝関節屈伸2・足関節底背屈2、MTS:膝関節屈伸3・足関節底背屈3であった。 考察 結果より、一症例であるが高頻度胸壁振動排痰補助装置スマートベストを用いた広範囲同時振動刺激は重症児(者)の筋緊張亢進に対して抑制効果がみられた。 振動刺激を用いた治療は、誰でも簡便に実施でき、一般的に行われる重症児(者)の筋緊張亢進に対して関節可動域運動やポジショニングに比べ、熟練の技術や知識が必要なく、医療技術の標準化が図れると考えられる。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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