日本重症心身障害学会誌
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P-15-05 変形・拘縮が強い症例に対して道具の作製・工夫により前傾座位が可能になった症例
石橋 哲弥湊 正美山田 直人
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2019 年 44 巻 2 号 p. 481

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抄録
はじめに 重症心身障害者では呼吸器障害のケアにおいて腹臥位や前傾座位での姿勢管理は必要である。しかし変形・拘縮が強く取ることができる姿勢が限られてしまうことが少なくない。 今回、リハビリテーション目的で保持具を手作りし、前傾座位が取れるようになった症例について報告をする。 対象 当園に入所中40代女性、大島分類1、寝返り不能レベル、右肺摘出・喉頭気管分離術・右股関節内転筋切離術・腸瘻造設後、胸腰椎右凸側弯98°、両股関節脱臼で右股関節は強い屈曲開排位で固定、左下肢は伸展位で固定し両上肢は強い引き込みがみられる。 日常的に可能な姿勢は仰臥位ないし側臥位に限られ右側臥位にはSpO2の低下みられる。 経過 症例は訓練ベット上後方介助では股関節の強い変形や上肢引き込みのため、端坐位すら困難を伴い前傾には至らなかった。そこでリハビリテーション医と理学療法士により本人の望ましい姿勢を作った状態で採型を実施。採型では形状記憶固定具クッション「イーコレ・ベーシック®」(以下、形状記憶固定具)を用いて座面と体幹部の型をとり、型に合わせて発泡スチロールとウレタン、マットを合わせて作製する。座面では下肢の可動制限に留意し跨いで座れるものを作製し、体幹部では気管切開部・腸瘻部に留意しながら前方に寄り掛かれて、体側に支持できるものを作製する。 倫理的配慮 当園倫理委員会の承認を受け、研究の趣旨と研究参加への自由意志の確保、プライバシーの保護など説明、承諾、同意を得た。 結果 体幹を前方から支持することが可能になり前傾座位姿勢が確実に不安なく実施できるようになった。後方で支えなくても大丈夫なため、前方から表情が見られるようになった。 考察 対象者のように変形・拘縮が強く、取れる姿勢が限られ色々な姿勢経験が少ない方でも姿勢評価を行いながら形状記憶固定具で採型を行うことで環境調整ができることが分かった。 申告すべきCOIはない。
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© 2019 日本重症心身障害学会
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