日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
第4回看護研究応援セミナー
臨床の研究シーズを芽吹かせよう
名越 恵美
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2020 年 45 巻 1 号 p. 79

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抄録

看護研究を行うことは、看護職や介護職などの専門職集団としての責務である。そこで、日々の臨床実践を行っている中で気になった「心に引っかかった小さな疑問」を「見逃さず」に検証していくことが必要になる。しかし、「心に引っかかった小さな疑問」の答えをやみくもに探しても効率が悪い。「心に引っかかった小さな疑問」は、研究動機であり、手順を追って絞り込んでいくことでリサーチクエスチョンになっていく。 まず、その引っかかっている事象の状況を詳しく記述する。そこから、2~3のキーワードを抽出し、先行研究で明らかになっていることがあるかどうかを見直し、研究疑問に加えていく。そして、すでに先行研究で明らかになっているならば、過去の文献をまとめていけば、疑問は解決するであろう。しかし、先行研究が少ない、または、自分の知りたい疑問が解決しない場合は、何が明らかになっていないのかを焦点化していく必要がある。そして、自分の看護実践と先行研究を見直して、テーマをできるだけ具体的に小さくし、リサーチクエスチョンに導いていくのである。 そのときに、気になっている現象に対して、「これは何であるか」「何が起こっているのか」「AとBには関係があるのか」「Aの後にBが生じるのか」等、どのような問いとして挙げたのかを確認していく。問いの種類によって研究デザインが決まってくるからである。研究デザインは、質的機能的、関係探索、関連検証など多くの種類があるが、研究デザインが決まると方法は自ずと決まってくる。 そして、研究は自分が関心を持っている内容を行うことがとても大切であるが、行うに当たっては、その研究をする上で看護研究としての意義がある内容を研究する必要がある。看護の領域の中で、その研究がどのような意味や価値や重要さを持つのか、さらには、具体的に看護管理・看護教育・看護実践などのどの領域、研究対象者にどのような貢献が成し遂げられるかを考慮していなければ、専門職としての研究になりえないのである。そして、研究対象者の方への倫理的配慮を忘れない中でも、特に自己決定ができない対象者や人権擁護が難しい対象者の方には、より繊細な配慮が必要である。さらに役割上生じている力関係に影響を受けやすい場合も繊細な配慮が必要となる。このことは、研究データの信ぴょう性や研究者のモラルが問われることにもなりかねないので、相手の立場に立ってしっかりと何が影響するか考えておかなければならない。最後に、日々の臨床実践の中で研究の時間を取るのは大変なことであるが、日々の小さな疑問がリサーチクエスチョンとなり、検証されていくことを願う。

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