抄録
目的
基礎疾患がある重症心身障害者(以下、重症者)は、COVID-19の重症化のハイリスク群である。重症者の命を守るために、施設は感染対策の一環として行動制限を行い、入所する重症者の生活変容は大きく変化した。重症者の生活の質を下げないために、重症者の日中活動がどのように変化したかについて評価することが必要と考え、行動制限中の入所者の日中活動についての振り返りを行って検証した。
方法
A施設B病棟入所者34名の日中活動報告書から生活を1.食事・おやつ2.散歩や日光浴、買い物3.他の活動に分類し、感染流行前2019年2月〜2020年1月と感染流行後2020年2月〜2021年1月で比較した。12名の職員が振り返りに参加し、内容をAI分析した。
結果
介護サービスを使用している21名は、平均で食事16時間、外出18時間、活動21時間の日中活動が行動制限により中止となった。施設外活動も感染流行前3.5〜36時間(平均11時間)から、感染流行後2〜6時間(平均4時間)と大幅に減少していた。生活の評価として全体平均で、感染流行前は食事51時間/年、外出23時間/年、活動148時間/年から、感染流行後食事55時間/年、外出43時間/年、活動140時間/年の変化があり、外出時間は増加し、活動時間は減少していた。食事、外出、活動全ての比較では11時間の増加があり、日中活動の時間は増加傾向であった。行動制限による生活の変化に対して、入所者の混乱は見られなかった。職員の振り返りでは、前向きなワードが多く出現していた。行動制限内でできることを日々の日中活動で行い、それに対する入所者の良い反応を感じていた。
結論
職員は活発化された日中活動に対して、入所者から良い反応を受け取り、モチベーションが高まっていた。これによりさらに日中活動が増加し、日中活動時間の増加に繋がったと考えられる。日中活動の増加により入所者の日中活動の変化は少なく、また混乱も見られなかったと考えられる。