日本重症心身障害学会誌
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O-7a-01 無呼吸で救急搬送された持続性吃逆の重症心身障害者の1例
中谷 勝利
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2021 年 46 巻 2 号 p. 251

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抄録
はじめに 2016年に当センターにおける難治性の吃逆症例についてまとめ、原因検索とそれに対する治療、および対症療法としての薬物治療について発表した。今回は持続する吃逆後に無呼吸となるエピソードを繰り返して救急搬送されたケースを経験した。 対象 症例は溺水後遺症(1歳4か月時受傷)、急性脳症後遺症(4歳時罹患)の25歳の男性で、3歳時に喉頭気管分離術を、4歳時に噴門形成術を受けられ、右凸の側弯と拘束性換気障害が進行し、18歳より分泌物が多いときのみ酸素を投与することにしていた。搬送された救急病院で血液検査や頭部CT検査が施行されたが、著明な代謝性アルカローシス以外には所見がなく、在宅人工呼吸器の適応も含めた対応の決定のため救急病院より受診を依頼された。来院時、吃逆は止まっており、血液検査では呼吸性アシドーシスと代償性の代謝性アルカローシスが認められた以外には大きな異常はなく、受診中に鮮血様の胃内容が多量に認められたため、ランソプラゾールを静注したのち、エソメプラゾールを処方し、ご家族に無呼吸時のBaggingは10回/分程度でゆっくり行うように指導して帰宅していただいた。その後1か月余は吃逆が認められなかったが、その翌月には持続時間は短いものの吃逆が認められることがあるということで、胃食道逆流症の再発を疑って上部消化管造影を施行した。その結果、wrap部分は維持されており、胃食道逆流ではなく胃部膨満が誘因ではないかと考え、左側臥位での注入は控えていただくように指導した。その後は今のところ吃逆のエピソードはない。 考察 今回の吃逆は2秒に1回程度の短い周期で持続したことと、拘束性換気障害のため気管切開されており、胸式呼吸が非常に弱くて腹式呼吸が主な呼吸様式であったことが要因と考えられた。 結語 稀な症例の経験ではあったが、基礎となる条件を持っている症例は多いこともあり、若干の考察を加え供覧したい。
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