抄録
背景と目的
小児在宅療養推進とともに、地域で児・家族の主体性を尊重した関わりが益々求められるが、家族との関係のあり方や具体的実践は、個々の看護師の力量で試行錯誤する現状がある。そこで本研究は、小児訪問看護師が家族との関係づくりでどのような困難を感じ、対処しているかを明らかにする。
対象と方法
小児専門訪問看護事業所(1か所)の看護師(28名)対象に質問紙調査
結果
1)有効回答27名のうち、当事業所の小児訪問看護経験は5年以上17名(63.0%)。家族と関係を築くことを困難と感じるのは9名(33.3%)で、経験年数と有意な関連無し。訪問看護で困難を感じた経験あり24名(88.9%)のうち、家族に関することが19名(70.4%)で最多。
2)最も困難な一事例を想起し(20例)、困った内容の記述をコード化、類似性に基づいてグルーピングし、6つのカテゴリ、20の中カテゴリ、52コード抽出。【子どもの権利がまもられていない】、【児の病状やケアについての理解が家族と看護師で一致しない】、【家族が訪問看護を必要としない家庭に訪問しなければならない】、【家族とコミュニケーションが取りにくい】、【訪問看護から逸脱している】、【関係機関と看護師とのずれ】だった。そのときの看護師の気持ちは、つらい、行き詰り、無能感等だった。対処は、家族の傾聴、看護実践の言語化、家族ができる方法模索、関係機関や上司、他の家族員と連携等だった。
考察
看護師が家族との関係づくりで感じる困難感は、家族との認識のずれや、コミュニケーションの難しさだった。実際の課題解決に加えて、看護師が抱える困難な感情を軽減することが大切である。そのためには、目標の折り合い、できていることへの着目、看護師が肯定される経験等が有効であり、自己を客観視し、全体を俯瞰する視点をもつ機会(事例検討やスーパービジョン、多職種連携等)が求められる。