日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-12-06 小児訪問看護における家族との関係形成に関する訪問看護師の困難感と対処
小形 優子石田 亜紀子日隈 佳代村野 由紀子井上 智子根本 美奈子小川 一枝
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 46 巻 2 号 p. 271

詳細
抄録
背景と目的 小児在宅療養推進とともに、地域で児・家族の主体性を尊重した関わりが益々求められるが、家族との関係のあり方や具体的実践は、個々の看護師の力量で試行錯誤する現状がある。そこで本研究は、小児訪問看護師が家族との関係づくりでどのような困難を感じ、対処しているかを明らかにする。 対象と方法 小児専門訪問看護事業所(1か所)の看護師(28名)対象に質問紙調査 結果 1)有効回答27名のうち、当事業所の小児訪問看護経験は5年以上17名(63.0%)。家族と関係を築くことを困難と感じるのは9名(33.3%)で、経験年数と有意な関連無し。訪問看護で困難を感じた経験あり24名(88.9%)のうち、家族に関することが19名(70.4%)で最多。 2)最も困難な一事例を想起し(20例)、困った内容の記述をコード化、類似性に基づいてグルーピングし、6つのカテゴリ、20の中カテゴリ、52コード抽出。【子どもの権利がまもられていない】、【児の病状やケアについての理解が家族と看護師で一致しない】、【家族が訪問看護を必要としない家庭に訪問しなければならない】、【家族とコミュニケーションが取りにくい】、【訪問看護から逸脱している】、【関係機関と看護師とのずれ】だった。そのときの看護師の気持ちは、つらい、行き詰り、無能感等だった。対処は、家族の傾聴、看護実践の言語化、家族ができる方法模索、関係機関や上司、他の家族員と連携等だった。 考察 看護師が家族との関係づくりで感じる困難感は、家族との認識のずれや、コミュニケーションの難しさだった。実際の課題解決に加えて、看護師が抱える困難な感情を軽減することが大切である。そのためには、目標の折り合い、できていることへの着目、看護師が肯定される経験等が有効であり、自己を客観視し、全体を俯瞰する視点をもつ機会(事例検討やスーパービジョン、多職種連携等)が求められる。
著者関連情報
© 2021 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top