抄録
はじめに
医療を必要とする子ども(以下、医療的ケア児)は、保育園利用ニーズがあっても看護師がいない等の理由で入園に困難さがある。政令指定都市A市内の保育園における医療的ケア児の受け入れ実態を明らかにし、地域保育園に受け入れられるための課題を検討した。
調査対象と研究方法
A市の244の公立・認可保育園園長を対象に郵送法にて自記式質問紙調査を2019年1月〜3月に行った。データ分析は単純集計とBerelson,Bの内容分析手法で行った。
結果
回収は147園(回収率60.2%)、有効回答数は144園(有効回答率59%)で、医療的ケア児の保育経験のある園(以下、ある園)8園(5.6%)、保育経験のない園(以下、ない園)は136園(94.4%)であった。ある園8園中看護師1名配置園は2園(25%)で、配置なし6園(75%)であった。ない園136園のうち今後も「受け入れは極めて難しい」と回答した園は132園(97.1%)で、その理由を「現状の保育体制では受け入れる余裕はない(100%)」と回答していた。園で抱える問題について自由記述から「保育士不足のため一人の保育士が抱える仕事の負担が大きい」「個別支援児の増加」等が分類された。うち20園(15%)は看護師1名配置園だが、受け入れが難しい理由として「園の業務で余裕がない」「0歳児対応職員だから」等をあげていた。
考察
先行研究から医療的ケア児の保育施設利用を可能にする要因は「看護師配置」「他機関との連携」「園全体での取り組み」「保護者の熱意」の4要因であった。今回の調査で看護師未配置園での受け入れがあり、これは他の3要因で未配置部分を補ったためと推察された。緊急対応、高度化する医療的ケアに対応するためにも看護師配置は必須であるが、医療的ケア児を地域保育園で受け入れていくためには、看護師配置するだけでなく、保育園の余裕のない現状改善、根本的な人員配置や環境整備の必要性が示唆された。