日本重症心身障害学会誌
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O-13-04 胃瘻チューブ「事故抜去」報告後の経過と結果について
田島 雅之小川 俊枝田中 宏子荒川 浩一野田 真一郎
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2021 年 46 巻 2 号 p. 277

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抄録
はじめに 2020年に8件の胃瘻カテーテル交換後の「事故抜去」が相次いで発生し、本年1月までに総計17件の「事故抜去」があった経過と結果を改めて再考し、「事故抜去」の要因を検討したので報告する。 目的 胃瘻カテーテルの「事故抜去」に関連した要因を探る 結果 1.相次いで発生した胃瘻チューブの「バルーンバースト」8件について、製造元に調査依頼した所、製造工程上の規格内ではあったが、シリコーンゴムの製造上に生じる原材料由来の粒状物の大きさの変化が影響した可能性があるとの返答があった。 2.バルーンバースト耐性に影響を与えたのは、患者の胃内環境も影響していたと考えられた。 3.「バルーンバースト」が発生した入所者は、頸部の反り返り、全身の筋緊張、脊柱側弯等が強い方であった。 4.「バルーンバースト」以外の「事故抜去」は、すべて固定水が入った状態での逸脱で、トップの胃瘻チューブでおきていた。 考察 胃瘻の瘻孔は、わずか数時間で縮小し約24時間で閉鎖するといわれている。「事故抜去」が発生した時にはできるだけ早く発見し、瘻孔を確保する事が必要で、新しいカテーテルが正しく胃内に挿入されていることを専門医が確認してから行う必要があるため、胃瘻チューブの「事故抜去」は、医療事故事例、ヒヤリハット事例として多くが報告されている。 今回、連続して発生した「バルーンバースト」の原因となったひとつに、製造工程上の要因が大きくあり、また、入所者自身の身体的特徴の要因であると思われる頸部の反り返り、筋緊張亢進、脊柱側弯と、胃内環境等が影響した結果、バルーンバーストが発生したと思われた。 その後、改良されたファイコン胃瘻バルーンチューブの「バルーンバースト」は発生していないが、胃瘻チューブは、製造販売業者によりそれぞれ特性があるので、今後も入所者自身の身体的特徴の要因を考慮した胃瘻チューブ管理が必要であると思われた。
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