日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-16-02 側彎の重症度による腹臥位の効果の違いと肺炎予防に対する一考察
竹原 祥平
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2021 年 46 巻 2 号 p. 286

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抄録

はじめに 重症心身障害が肺炎に罹患すると、食事・入浴・参加・活動などの日常生活が送れなくなり、また長期臥床により機能低下が生じる可能性がある。そのため、肺炎予防が理学療法目標の一つになることが多い。 重症身障障害者の肺炎予防は、機器を用いた方法やポジショニングなどが散見され、中でも腹臥位による効果の報告が多い。 今回、側彎の重症度の異なる重症心身障害者2例に対し、肺炎予防のため腹臥位を取り入れた。2例の体位排痰による効果の相違について報告する。 症例1 Beckwith-Wiedemann症候群の23歳男性。大島横地分類A1。Cobb角右凸18°。 1期(9か月):運動療法を主に行い、毎回腹臥位はとらずこの間の肺炎は7回。2期(9か月):CT上S6に分泌物が認められ、理学療法時は毎回腹臥位を行い、肺炎は3回に減少。3期(22か月):2期で経過が良かったことから、理学療法時に加え日中にも腹臥位を取り入れ、肺炎は1回となった。 症例2 脳性麻痺の29歳男性。大島横地分類A1。Cobb角右凸68°。 1期(17か月):主に運動療法を行い、毎回腹臥位はとらずこの間の肺炎は3回。2期(13か月):症例2も理学療法時に加え日中に腹臥位を取り入れたが、肺炎は6回に増加。3期(11か月):CT上S6に分泌物を認め、肺の形状に合わせ、重力を利用できるよう腹臥位角度を調整した結果、肺炎に罹患しなかった。 考察 2症例とも分泌物がS6に貯留していたが、腹臥位による肺炎予防効果が異なった。症例1は、胸郭変形が少なく腹臥位をとるだけで肺炎が減少したのに対し、症例2は胸郭変形が大きく、腹臥位にしても肺炎を減少できなかった。しかし、分泌物貯留区域と肺の形状、重力方向を考慮した腹臥位に修正したことで、肺炎回数を減少できた。したがって、胸郭変形が大きい症例では、画像にて分泌物貯留の位置を確認し、肺の変位状態と重力の位置関係を踏まえた姿勢をとることが肺炎予防に重要と考える。

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