抄録
はじめに
CHARGE症候群は多発奇形症候群であり、合併症により多面的な医療管理を必要とする。今回、姿勢変換への不安が強い症例に対して環境支援を中心とした理学療法(以下、PT)の介入を行ったので報告する。
症例紹介
3歳9か月女児、診断名はCHARGE症候群。大島の分類4。在胎37週5日、2594gにて出生。C型食道閉鎖、喉頭軟化に対して食道根治術、喉頭分離術を施行。1歳9か月時胃瘻造設、2歳9か月時経腸栄養に変更。理学療法介入(2020年10月開始)1歳2か月、体重5kg。日常生活では背臥位で同じ玩具で遊ぶことを好み、腹臥位や座位に対する拒否が強く啼泣していた。前施設での直接的な徒手加入によるPTでは啼泣していたため、当園介入時の母親のニーズは認知機能の発達、遊びの幅を広げることであった。PTでは自発的な探索活動を引き出すことで遊びの幅を広げるとともに移動能力の向上を目標とした。介入では直接的な徒手介入は最小限とし、児の快適な環境を身体状況や運動機能から評価し設定した。背臥位のポジショニングから開始し、感覚遊びを中心に母親の抱っこ、担当者の抱っこ、座位保持椅子へと段階的に姿勢と環境を変えながら、児の自発的な動きを促した。
結果
(2022年6月)3歳9か月、体重8.6kg。粗大運動機能評価は臥位と寝返り領域27.5%→49%、座位領域0%→16.7%。背這い移動を獲得、座位保持椅子に自ら要求して座り、玩具を選択して遊ぶ、さらに靴下を脱ぐなど日常生活動作も可能となる。栄養摂取方法の変更により体重も増加。
考察
発達は身体要因と環境要因の相互関係から成り立つ。児の身体機能、認知機能を評価し、PTにて快適な周辺環境を段階的に設定することで、姿勢変換に対する不安を軽減させ、自発的な運動を引き出すことができた。その結果、認知機能や遊びの発達、また移動手段や日常生活動作の獲得につながった。