抄録
目的
小児期発症の重症心身障害のある患者(以下、重症者)の一定数は、成人以降も継続して小児を対象とした診療科で診ており、子どもの自立に焦点をあてた移行期支援では対応が難しい。このような患者の親の通院および入院に関する思いと要望を明らかにし、より良い成人移行を考えることを目的とした。
方法
小児診療科に通院している成人期にある小児期発症の重症者の親を対象に、通院および入院に関する思いと要望について半構造化面接を行った。録音データから逐語録を作成し、テーマに関連した語りをコード化し、類似性に基づいてカテゴリー化した。本研究は研究者所属施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した。開示すべきCOIはない。
結果
対象者は1施設に通院する重症者の親6名(一組は両親)。重症者は全員20歳代。親の通院および入院に関する思いと要望は、19のサブカテゴリーから6つのカテゴリーを生成した。親は重症者が小児診療科で診療を受けていることに違和感があり【大人であることを意識する】、しかし【小児科・小児病棟で困っていない】、【いまの対応に安心感がある】、小児診療科で【このままずっと診て欲しい】と思っていた。成人診療科への転科を意識し【見通しを立ててくれたら移行できる】と考えているが、受け入れてくれる診療施設がないなかで、医療者の対応に成人移行への圧を感じる、子どもの命を守るのは親しかいないなど【居場所のない孤独感】を抱いていることが明らかになった。
考察
重症者の親は、成人期移行の必要性を感じつつ受け入れてくれる診療施設がないなかで、小児診療科での通院および入院を望んでいた。重症者と家族が安心して診療が受けられることを保証すると共に、重症者の特徴を踏まえた看護ケアモデルの必要性が示唆された。本研究は、平成31年度科学研究費補助金の助成により行った研究(課題番号19K11096)の一部である。