抄録
[目的]白癬の原因菌の正確な同定は従来培養により得られた菌が用いられてきた。しかし病巣からの直接の菌の同定が可能であれば、時間、資材の節約になると考えられる。そこで今回 PCR-RFLP 法を用いて趾間等の鱗屑から直接白癬菌の検出及び同定を試みた。[材料・方法]鱗屑は金沢医科大学皮膚科外来受診者の白癬と疑われる部位より得た。鱗屑を緩衝液 (SDS, 2-mercaptoethanol 含む)に懸濁し、加熱処理後フェノール・クロロホルム処理を経て DNA 調製液を得た。これを鋳型として、ITS1,ITS4 のプライマーペア (White et al.,1990) を用いた PCR を行い、rRNA 遺伝子の ITS 領域を増幅し、その制限酵素切断片長多型 (RFLP) 分析 (Mochizuki T et al.,2003) を行う事で菌種同定を行った。[結果]24 人 32 部位の鱗屑について KOH 検査を行い、陽性が 26/32 (81%) であった。KOH 陽性のうち 13/26 (50%) で ITS 領域の増幅がみられた。KOH 陰性では 3/6 (50%) で ITS 領域の増幅がみられた。増幅された 16 検体の RFLP パターンは Trichophyton rubrum 型 4 検体、T. mentagrophytes 型 12 検体であった。この中には一人、異なる部位 (左右踵) でそれぞれ異なる菌種が検出されたケースが含まれる。培養結果もあわせて報告する予定である。