日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第49回 日本医真菌学会総会
セッションID: P-124
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ミナミバンドウイルカのアスペルギルス肺炎症例について
*植田 啓一柳澤 牧央宮原 弘和内田 詮三
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抄録
1. はじめに:鯨類は水中生活をおくる哺乳類である.そのため肺疾患に関しては生前の確定診断が困難であり,死後の剖検で確認されることが多い.また消化器官には,食道と主胃の間に前胃と呼ばれる食道の膨大部が存在し,機械的消化能力が落ちると細菌や真菌の増殖場になる.沖縄美ら海水族館で飼育中のミナミバンドウイルカ(Tursiops aduncus)にアスペルギルス肺炎が生じ,真菌学的検査,超音波画像診断検査,X 線検査により患部の状態を把握しながら治療を行い,病状の改善を得たので治療の概要を報告する.
2. 対象および方法:症例は水槽内繁殖個体のミナミバンドウイルカ(雌:6 才,体長:230 cm,体重:150 kg)で,2004 年 12 月 31 日より摂餌不良となり,削痩,体重の減少,呼吸音の濁音,呼吸孔内壁の白色化が認められた.血液検査および X 線撮影装置(GE medical 社)と超音波画像検査(ALOKA 社)による肺野の観察を実施した.
3. 成績および治療経過:真菌学的検査により呼気,前胃内容液よりAspergillus sp.が検出された.呼吸時に呼吸孔より出血,内壁の白色化が観察された.X 線検査,超音波画像診断検査により右肺に空洞化が確認された.以上の結果より,抗真菌薬(ミカファンギンナトリウム),電解質液の静脈内投与を開始し,摂餌が安定後に抗真菌薬(イトラコナゾール)の経口投与に切り替えた.治療開始約 120 日目の X 線検査により空洞化の消失が認められ呼気,呼吸孔内壁のスワブ,前胃内容液より真菌感染は確認されなかったことにより治療を終了した.
4. 考察:アスペルギルス肺炎は,水中生活をおくる鯨類において呼吸困難や呼吸器出血等の重篤な症状を引き起こし,肺野で人や陸上動物と同様に空洞化を生じることが明らかとなった.また X 線検査,超音波画像検査を行うことにより生前の肺野の状態を観察が可能となり適切な治療が可能であった.
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© 2005 日本医真菌学会
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