抄録
我が国ではヒストプラズマ症は輸入真菌症として取り扱われているが,実態は国内症例と輸入症例の混在する真菌症である.現在までにイヌ症例は 7 例報告または確認されており,いずれも皮膚症状を主徴としているが,全身感染に移行した例もある.現在まで菌分離を伴った症例はなく,いずれも rRNA 遺伝子 ITS 領域の部分配列を病理組織等から検出することにより診断されている.今回 6 症例について検出遺伝子塩基数を増やし,GenBank に登録されている原因菌 Histoplasma capsulatum の同領域遺伝子配列に新たなるタイおよび日本の臨床分離株等を加え,分子疫学的に解析した.病理組織標本または皮膚潰瘍の膿より DNA を抽出し,nested-PCR 法により増幅,518 塩基を決定し,樹系解析した.本邦におけるイヌのヒストプラズマ症から検出された遺伝子配列のうち 4症例はタイの播種性ヒストプラズマ症患者分離株と 100% 一致し, 2 症例も近縁であった.またこれらの配列は日本の播種性症例より分離された株と同じクラスターに属し,旧来 H. capsulatum var. farciminosum と言われていた遺伝子型と近縁であった.イヌのヒストプラズマ症の臨床症状は全身感染に移行すること,ヒト由来株と同じ遺伝子型で発症することから,ウマのヒストプラズマ症すなわち仮性皮疽の異宿主寄生ではなく,イヌも本来の宿主と成ることを示唆していた.