霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: P-27
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ポスター発表
系列再認課題を用いたチンパンジーの情動記憶の検討
*狩野 文浩田中 正之友永 雅己
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抄録
 情動を喚起する事象に対する記憶は、情動的には中立な事象の記憶よりも、後に再生や再認がなされやすい。このような記憶は情動記憶として知られ、ヒトでは数多くの研究が行われてきた。情動記憶の進化的起源はかなり古くまで遡ることができるのではないかと考えられているが、実際にそのような予測を支持する比較認知的研究は見当たらない。この問いに答えるためには、ヒト以外の霊長類を対象とした情動記憶の研究が必須である。
 本研究では、ヒトに最も近縁であるチンパンジーを対象とし、情動刺激の記憶に対する効果について系列再認課題を用いて実験的に検討した。情動刺激にはチンパンジーが敵対的行動を示す場面、中立刺激にはチンパンジーが平静でいる場面の静止画を用いた。実験1では、4刺激系列の再認課題において、情動刺激と中立刺激をさまざまに組み合わせて提示した。
 その結果、1個体において、情動刺激は中立刺激に比べ再認されやすかった。そこで、この個体についてさらに8刺激系列の再認課題を行い、情動刺激がその前後に提示された中立刺激の再認に与える影響を検討した(実験2)。その結果、実験1同様、情動刺激の再認が促進されるという結果が再度確認された。さらに、情動刺激によって後続する項目の再認が促進されることを見出した。以上の結果から、チンパンジーにおいてもヒト同様に情動刺激の記憶が促進される可能性が示唆され、他の中立刺激の記憶についても情動によって効率化される可能性が示唆された。
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© 2007 日本霊長類学会
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