抄録
我々は 2001-2002 年に日本国内において Arthroderma benhamiae var. erinacei (ABVE) を 7 株分離した.6 株が交配型(+)で 1 株が(-)であった.このうち IFM 50998(+ 株)と IFM 51499(- 株)及び A. benhamiae African race (ABAF) の RV 30000(+ 株)と RV 30001(- 株)の 4 株を使用してそれぞれ交配を行い,その F1 progeny (F1) の 38-40 株について交配型,ITS 領域の遺伝子配列,ウレアーゼ遺伝子の一部につき遺伝子型を比較した.ABVE および ABAF 同士の交配により形成された裸子嚢殻は対峙線上に並列し,大きさは均一で,内部は子嚢胞子で充満していた.一方,ABVE と ABAF の交配による裸子嚢殻はいずれも ABAF 側にのみ形成され,小型で子嚢胞子の数は少なく,偽裸子嚢殻も多かった.それぞれの組み合わせにおいて,子嚢胞子を無作為に取り出し発芽させて得られた結果は ABAF 同士,ABVE 同士およびの ABVE(-)と ABAF(+)の F1 は交配型,ITS 領域の遺伝子配列,ウレアーゼ遺伝子とも親と同じ遺伝子型がほぼ 1:1 で出現した.一方,ABVE(+)と ABAF(-)の F1 は ITS 領域,交配型,ウレアーゼ遺伝子ともに ABVE 型が優勢であった.調べた遺伝子配列にはいずれの交配の場合も交雑は認められなかった.ABVE(+)と ABAF(-)の交配の場合,F1 の交配型ならびに遺伝子発現アンバランスから,この交配には何らかの致死的要因が働いていると推測された.よって Arthroderma benhamiae var. erinacei は A. benhamiae 種のなかで独立変種として区別するのが妥当と考える.