深在性皮膚真菌症の1つスポロトリコーシスの原因菌であるSporothrix schenckiiについては感染原の調査、疫学調査等から自然界分離株の報告もある。しかしわれわれはこれまでS. schenckiiとして報告された自然界分離株の多くがS. schenckiiの臨床分離株とは異なる遺伝子型を持つ事、更に病原性が無い事が示され、実はS. schenckiiでは無い事も指摘して来た。 今回スペインの土壌から分離され、S. schenckiiと形態学的に同定された3株の遺伝子型をリボソームRNA遺伝子のITS領域を用いた制限酵素切断片長多型(ITS-RFLP)で調べたところ、3株は同一のパターンを示したが、これまでの臨床分離株のITS-RFLPパターンとは異なった。さらに既に報告されている中国の自然界分離株のパターンとも異なった。そこでこの菌株の病原性の検討を始め、27℃、35℃、37℃で培養したところ35℃、1週間の培養で臨床分離株は発育が認められる一方、スペインの土壌分離株では発育が認められず病原性が無い事が強く示唆された。今後さらに感染実験、ミトコンドリアDNAタイプ、スキンテストなどを検討し報告する予定である。(Ishizaki, Jpn J Med Mycol 43: 257-260, 2002)