抄録
長崎県に於いては、以前より長崎大学皮膚科・真菌研究室を拠点とし、関連病院皮膚科と一部の真菌に興味のある開業医との間で真菌培養ならびに同定のネットワークが構築されていた。そこで、Trichophyton tonsurans 感染症の流行拡大に合わせてこのネットワークを県下の皮膚科診療所全体に拡大し、症例の掘り起こしに努めた。その結果2003年から2007年末までの5年間に、長崎県下で真菌培養により、67例のTrichophyton tonsurans 感染症が確認された。学年別では大学2例、高校50例、中学12例、小学1例、幼児2例で、高校生を中心に感染が拡大していたが、最近中学生の症例が増加傾向を示してきた。男女別では男63例、女4例であった。競技別では柔道58例、相撲4例、レスリング1例、その他格闘経験無しが4例で、競技人口に比例して柔道経験者が多かった。病型別では頭部白癬4例(black dot ringworm 1例、kerion Celsi 1例)、頭部白癬と体部白癬の合併例9例、体部白癬54例であった。罹患部位はほぼ全ての症例が上半身であり、露出部に多かった。臨床的には体部白癬のみでもHair brush 法で培養すると42例中18例で菌が検出された。治療に関しては頭部白癬例にはすべて内服治療が行われれ、体部白癬のみでも半数に内服治療が行われていた。