抄録
【目的】
アスペルギルス属菌の菌体外へ分泌される蛋白質及び細胞表層に存在する蛋白質を網羅的に同定し、それら蛋白質を標的とする診断応用を検討すること、並行して遺伝子破壊による病原性の変化を検討し治療標的となる可能性を探る。
【方法】
真核生物の蛋白質細胞内輸送メカニズムは種を越えて保存されている。そこで、哺乳類で細胞膜および分泌蛋白質を網羅的に同定できるシグナルシークエンストラップ(SST-REX)法を用いてAspergillus fumigatusの細胞表層および分泌蛋白質の網羅的同定を試みた。
【結果・考察】
YPD培地で培養したA. fumigatus由来のcDNAライブラリーを作製しSST-REX法を行った。その結果、アミノ酸配列の相同性から機能を推定できない15種類を含む75種類の遺伝子が同定され、その多くが細胞表層あるいは分泌蛋白質をコードすると推測された。一方、窒素源飢餓条件下で培養したA. fumigatus由来のcDNAライブラリーを用いて同様の手法で同定された遺伝子は、多くがYPD培地による培養で同定された遺伝子と同じであったが、窒素源飢餓特異的な遺伝子も含まれていた。現在、診断を目的とした検出系の作製と病原性の解析のために、同定された遺伝子の抗体の作製、遺伝子のクローニングを行っている。
【結論】
SST-REX法により、A. fumigatusの細胞表層および分泌蛋白質を効率よく同定をすることができた。この方法は、他の病原真菌にも応用可能であると考えている。