抄録
【目的】病原真菌Candida glabrataは、出芽酵母とは異なり好気条件でも血清や胆汁からコレステロールを取り込んで、アゾール剤によるエルゴステロール合成阻害を回避する。本研究では、ステロールトランスポーターCgAus1pによるステロール取り込みの分子機構と生理的役割を明らかにすることを目的とした。【結果と考察】CgAUS1および出芽酵母のortholog遺伝子ScAUS1、ScPDR11をそれぞれ恒常的に発現させた出芽酵母株を作製し、フルコナゾールによるエルゴステロール合成阻害が血清の添加によって回避されるかどうかを検討した。好気および嫌気培養条件におけるフルコナゾール感受性を比較した結果、CgAUS1発現株はScAUS1およびScPDR11発現株と同様に嫌気条件下でのみ、血清添加によって耐性化した。また、出芽酵母の細胞壁マンノプロテインをコードするDAN1遺伝子はステロールの取り込みに必要であると考えられている。DAN1を破壊すると、CgAUS1発現株も血清によるフルコナゾール耐性化は著しく損なわれた。本研究により、出芽酵母とC. glabrataには共通のステロール輸送機構が存在すること、またステロール取り込みに関わる因子が出芽酵母では嫌気条件でしか発現しないのに対して、C. glabrataでは好気条件においても発現することが示唆された。